教室紹介

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総合内科学2教室General Internal Medicine 2

スタッフ紹介

教育重点及び概要

 通常、大学病院をはじめとした基幹病院では臓器別専門性に基づいた診療がなされているが、全人的医療を行って欲しいという患者側からみれば、必ずしも望ましい診療形態ではない。また、医師サイドも、専門性が強い分野であればあるほど、専門から外れている患者に対して診療しようとする意欲が薄れがちであり、本学が求めている「良医を育てる」という教育的見地からみても必ずしもよい診療体制とは言えない。しかし、専門性の追求は医療者側からも質の高い医療を提供するうえでやはり重要であり、質の担保は患者側からしても当然要求してくる権利でもある。全人的医療を行うことと、質の高い医療を提供することは、患者中心に考えれば両立すべきものであるが、これは決して一人の医師に万能になれと言っているわけではない。自分ができることとそれ以外を正しく理解し、全人的医療をコーディネートすればよいわけである。当施設では、内科領域の診療・研究・教育の充実を図るため4つの総合内科学教室が創設されている。幅の広い内科学を担当するために、4科は協力し合って、総合的な知識と技能を備えた内科医を育成し、それを基盤として、患者、医師が共に要求する高い専門性にも応えられるような診療教育体制を維持し、提供することが目的であると考える。特に当教室が担当する消化器領域は患者数が多く、日常診療から専門的診療まで幅広い対応が求められる。 また、消化器診断治療には、内視鏡、超音波などの日常診療上、身近なModalityがかかせない一方、これらを用いた高い技量と専門知識が必要な侵襲的治療を行う領域でもある。消化器病診断治療学を基本として全人的医療を行いながら、他の3科と協力し、一般診療から高度医療まで対応できるバランスのとれた良医を育成することを当科の目的とする。

研究分野および主要研究テーマ

消化器侵襲的画像診断治療学(Interventional Endoscopy and Radiology in Gastroenterology and Hepatology)

 消化器病学に限らず、画像診断は診療上、欠くことができない。消化器診療では、内視鏡、超音波、X線が消化器領域の日常診療から高度な治療まで幅広く活用されるModalityである。これらを利用した消化器癌の早期発見、低侵襲治療(根治的治療と緩和治療)を目指した臨床研究、新しい診断治療法やDeviceの開発を積極的に行う。

膵癌早期発見スクリーニングプログラムの確立

 膵癌はいまだに早期発見の困難な癌である。早期で見つけるには高危険群の設定、検査の感度と特異度を高めることが重要である。現時点では慢性膵炎や膵嚢胞性疾患を合併している患者に膵癌が比較的多く発生することが言われている。それ以外のリスクの洗い出しをSNP解析など分子生物学的アプローチで行い、高危険群の設定後、適切なスクリーニング方法、間隔などを設定する。中心となるModalityは超音波内視鏡と考えている。超音波造影剤、穿刺細胞診を用いた膵癌診断法の開発を行う。

切除不能膵胆道癌に対する侵襲的内視鏡治療の有用性の検討

 膵胆道癌は切除が唯一の根治的治療法であるが、いまだ切除不能な状態で診断される症例は少なくない。化学療法の発達により予後は改善されつつあるが、患者の半数以上で胆道狭窄、あるいは消化管狭窄を伴っており、低侵襲にこれらの症状を緩和しながら化学療法を安全に行う必要がある。胆管ステントや消化管ステントは内視鏡的に挿入可能であり、低侵襲に治療ができる。しかし、適応に関しては議論がある領域もある。
*切除不能肝門部悪性胆道狭窄に対するマルチステンティング
 肝門部悪性胆道狭窄では、ドレナージ領域やステントの材質にコンセンサスが得られていない。また、この領域はステンティングそのものに高い技量が要求される。これまで、他の施設に先駆けて数多くの学会、論文発表を行い、この領域では最先端を行く施設となっている。この強みを生かして、新しいデバイスの開発、トレーニングシステムの構築を行い、技術の標準化を行う。
*超音波内視鏡下穿刺術による新技術の開発と応用
 従来のERCP関連手技ではアプローチ不能であった領域に対して、超音波内視鏡下穿刺術は新たなアプローチルートを確保できる。担当、膵、膿瘍に対するアプローチの手技の標準化を行いながら、新しい専用デバイスを企業とともに開発する。
*消化管ステントの有用性の検討
 消化管狭窄は摂食障害をきたし、患者のQOLを大いに損なう。消化管ステントは外科的バイパス術と比較し低侵襲で安全性も高い手技である。積極的適応で患者の在宅期間を延長させることができる。

肝臓癌に対する内科的治療

*進行肝癌に対する治療
 肝癌はウイルス性肝炎、NASH肝硬変などハイリスク群の設定がなされ、スクリーニングシステムも確立しているが、いまだ進行症例に出合うことも少なくない。また、治療の過程で進行癌に移行してしまう症例もあり、治療法の確立が必要である。5-FU+IFN、動注化学療法は進行例であっても効果的で予後が延長できる。当施設では多数の経験があり、これらの治療法の効果的な投与方法、有効症例の臨床的背景などを解析し今後の新しい治療法の開発につなげる。
*肝臓に対するRFA
 肝癌に対するRFAは有用性、安全性が確立されてはいるが、施行できる施設数は限られている。当施設では肝癌に対するRFAを以前から積極的に行っていて、十分な効果を上げている。

生活習慣病としての肝臓病

 生活習慣病治療は疾病構造上、癌と並んで重要な領域である。近年ウイルス性肝炎治療に一定のめどが立ったため、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が注目されるようになった。当施設は全国でも有数のNASH症例を誇っている。これらの患者の病態解析を行い、生活指導のみならず、積極的薬物治療で肝硬変への進展を予防する方法を基礎的研究及び臨床研究から開発する。

早期胃大腸癌に対するESD

 内視鏡的粘膜剥離術(ESD)は適応に制限があるものの臓器が温存できる根治的癌治療である。以前からこの治療法を導入し、在院期間の短縮を図りながらも良好な成績を上げている。

将来の改善方策

 研究、教育ともに発展させるためには人が集まる環境づくりが大切である。そのためには、まず内部のみならず外部から認知してもらうこと、そして中にいる医局員が有意義に働くことができ、それを適切に評価する透明感のあるシステムづくりが重要と考える。
したがって質の高い学会発表や論文作成を積極的に行うだけでなく、地域医療の質向上のため、医師のみならず患者も対象とした教育講演活動も積極的に行う。そして当教室の積極性を全国だけでなく地域にもアピールする。さらに、集まる医局員がすべて診療だけでなく、教育、研究に時間がとれる環境づくりを行っていく。