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病態代謝学教室

病態代謝学教室

スタッフ紹介

教育重点及び概要

 近年、医学は、希少難病の病態解明と新規治療薬の開発、がん治療における分子標的薬の開発、iPS細胞を用いた再生医療、ゲノム編集技術を用いた遺伝子治療など、爆発的な勢いで進歩している。これは、多くの基礎医学研究者が、病気の病態を遺伝子から分子のレベルまで何十年もかけて解明した成果であり、基礎医学研究の成果が、実際の医療の現場で治療法の開発に結びつくという、医学という学問の醍醐味である。
 病態代謝学教室では、「基礎医学と臨床医学の間をシームレスにつなぐ医学教育」に重点を置き、基礎医学の知識が実際の医療の現場でどのように必要とされているのかを、実感できるように、講義内容を工夫している。主な担当科目は、第2学年を対象とした「ゲノム医学」と、第4学年を対象とした「臨床病態論」である。
 「ゲノム医学」は、今や、全ての医師、医療者に必須の知識である。遺伝子の基礎、家系図、遺伝形式、遺伝子関連検査法、遺伝カウンセリングから、遺伝子治療などのゲノム医療の最新トピックまでを、臨床症例を提示するなどして、わかりやすく解説している。講義と並行して行なう実習では、DNA抽出、PCR、大腸菌の形質転換などを、少人数のグループに分かれて行い、得られた実験データをグループ内や教員と議論し、時間内にレポート課題を完成させることで、より能動的に学修できるよう工夫している。
 「臨床病態論」は、臨床実習開始前の第4学年を対象に、演習形式の「症候論」と同時期に行なっている。臨床現場で遭遇する機会の多い各分野の15疾患15症例を臨床講義形式で取り上げ、その病態生理を、基礎的知識にもとづいて論理的に理解することに重点を置いている。臨床の現場で実際に遭遇する症例は教科書的なものばかりではなく、複合的で多彩な病態を呈している事が多い。臨床医として、将来診療に当たるうえで、常に論理的に考える姿勢を保ち、多くの選択肢の中から的確な診断・治療を選択することが出来るようになるために重要な科目である。

研究分野及び主要研究テーマ

 スフィンゴ糖脂質は生体膜のouter leafletに存在する膜脂質で、その発現は合成と分解の代謝バランスにより最適化されている。その代謝バランスが障害されると、様々な病態が引き起こされることが、ヒトの疾患や遺伝子改変動物の解析から明らかになっている。病態代謝学教室では、スフィンゴ糖脂質の合成や分解に関わる遺伝子のノックアウトマウスやモデル細胞株を作成し、その表現型解析を通して、スフィンゴ糖脂質の謎に迫り、次いで様々な疾患や病態への関わりを明らかにする事を目指している。現在進行中の主な研究テーマは、下記の3つである。

1)スフィンゴ糖脂質の構造多様性が担う生物機能の解明

 スフィンゴ糖脂質は親水性の糖鎖部分と疎水性のセラミド骨格からなり、セラミド骨格はスフィンゴイド塩基と脂肪酸から構成される。糖鎖部分、セラミド部分のそれぞれに臓器別、組織別、発生・発達段階別に特徴的な構造多様性が存在し、その数は数千種類にも及ぶとされている。しかしながら、その生物機能は十分には解明されていない。本研究では、スフィンゴ糖脂質の構造多様性の一部を欠損させた遺伝子改変マウスやモデル細胞を用いて、一見微細とも思えるスフィンゴ糖脂質の構造多様性が担う生物機能を解明することを目指している。

2)神経型リソソーム病における神経病態解明

 スフィンゴ糖脂質のリソソームにおける分解異常症は、希少難病-スフィンゴリピドーシス-を引き起こし、その多くが小児期に重篤な神経症状を呈する。サポシン(SAPs)-A、B、C、Dは、リソソームにおけるスフィンゴ糖脂質の分解において、加水分解酵素とともに必須の疎水性糖タンパク質で、前駆体であるプロサポシン(PSAP)遺伝子にコードされている。我々は、PSAP遺伝子の各SAPドメインに保存されている3対のジスルフィド結合に着目して、それらを形成するシステイン残基のうちの1つにアミノ酸置換を導入する方法を考案し、世界に先駆けて、SAP-A、SAP-CおよびSAP-Dの各特異的欠損マウスを作製することに成功している。SAP-A欠損マウスはクラッベ病、SAP-C欠損マウスはゴーシェ病に類似した病態を示し、SAP-D欠損マウスも、ヒトの欠損症は未報告であるものの、小脳失調を主体とする神経症状を呈する。一方、近年、スフィンゴリピドーシスの一つであるグルコシルセラミド(GlcCer)の分解異常症であるゴーシェ病の責任遺伝子GlcCer-β-グルコシダーゼ(GBA)のヘテロ接合性変異がパーキンソン病の危険因子であることが明らかになり、スフィンゴリピドーシスと様々な神経変性疾患との関係に注目が集まっている。本研究では、Rare diseaseからCommon diseaseの病態解明を目指すというスタンスで、我々が作製したサポシン変異マウスを含めた複数の神経型スフィンゴリピドーシスモデルマウスを用いて、神経変性疾患の病態解明と治療法開発を目指している。

3)遺伝性脱髄疾患─クラッベ病─に対する新規治療法開発

 クラッベ病は、リソソームに存在する酵素、ガラクトシルセラミド(GalCer)-β-ガラクトシダーゼ(GALC)の欠損を病因とする難治性の遺伝性脱髄疾患である。本研究では、クラッベ病モデルマウス由来の培養オリゴデンドロサイト前駆細胞やシュワン細胞を用いてクラッベ病に有効な新規治療薬の探索を行っている。