教室紹介

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脳神経外科学2教室

脳神経外科学2教室

スタッフ紹介

教育重点及び概要

 脳神経外科学2教室は平成24年に新設された教室であり、本年7月で8年目を迎える。活動は、川崎医科大学総合医療センターを拠点として、医大生、研修医等の教育担当を行っている。我々が担当する研修医・学生教育としては、1)脳卒中など意識障害、頭部外傷などの救急患者の診察方法、2)中心静脈や動脈ライン確保、気管内挿管、心臓マッサージなどの脳神経救急の初期対応から、 3)気管切開法、頭部を中心とした縫合、さらには 4)穿頭術や開頭術などの一般脳神経外科診療における各種の必須手技についての実地指導とその習得、外科手技や神経学を中心とした学問体系の理解、およびこれらの日常診療で生じた疑問にたいする情報収集と研究である。特に昨今では、教育が知識詰め込み、あるいは、流れ作業的な医療業務への対応となってしまっている部分も大きいが、命に深く関わる脳神経外科においては、より人間性を重視し、各患者さんに寄り添った診療態度や研究を教育方針としている。川崎医科大学総合医療センターにおいては、フットワークが軽く臨機応変に対応できる各科との連携体制を生かしながら、 1つのテーマをさまざまな角度から広い視野で俯瞰できるような人間性豊かな学生や研修医を育てていくことにも力を注いでおり、研修医・学生に好評を得ている。また、総合医療センター脳卒中科、リハビリテーション科などとも連携を密にして脳卒中最先端医療の教育に取り組んでおり実績をあげている。

研究分野及び主要研究テーマ

 当教室では脳神経外科学の中でも広く多くのテーマを課題に研究を行ってきた。その流れを今後も継承し、以下の点を重点的に研究を行なう。

1)くも膜下出血後の脳血管攣縮の病態の解明と治療法の開発

 くも膜下出血後に発症する脳血管攣縮はくも膜下出血の合併症で最も重要な予後不良因子であり、脳梗塞による神経脱落症状や死亡にまで至るような合併症を引き起こす疾患であるが、その原因や治療法は未だ確立されていない。我々は本疾患の重要な原因の一つが炎症反応であるという仮説を立て、炎症関連転写因子の一つである NFkappaBに対するおとり核酸投与によりウサギくも膜下出血モデルにおける血管攣縮を抑制することに成功した。(Hum Gene Ther. 9(7):1003-1011, 1998)。また、アデノウイルスや11Rタンパク質などの、収縮抑制物質を血管壁へDeliveryするドラッグメディエイターの構築をシカゴ大学や岡山大学細胞生理学教室等と共同研究で行った(J Cereb Blood Flow Metab. 31(11):2231-2242, 2011)。これらの結果を基に今後は更に血管攣縮抑制物質の開発や、脳血管への薬剤デリバリーシステムの構築などについての研究を進めていく予定である。

2)くも膜下出血、脳梗塞、重症頭部外傷に対する多角的治療戦略の構築

 実験レベルでの脳血管攣縮抑制治療と臨床の現場ではまだまだ解離があり、早く診断し治療するかということが重要な課題になっている。そのため我々はできるだけ臨床の現場に即した簡便かつ信頼性の高い脳血管攣縮モニタリング装置として INVOSの有用性についての研究を行ってきた。INVOSを用いることにより、より簡便にしかも持続的に血管の攣縮を判定できるようになった。このような研究の成果をもとに、くも膜下出血が引き起こす初期の脳損傷の研究に力を注ぎ、これを更に他分野にも広げて、脳梗塞や重症頭部外傷などにおこる初期の脳損傷のメカニズムの解明へと発展させていく。

3)神経内視鏡の脳神経外科疾患への応用

 脳神経外科手術においては、腹腔鏡などと異なり、より細経で特殊な内視鏡が要求されるため、内視鏡手術は他分野ほど発展していなかった。しかし、ここ数年の間に脳神経外科手術に特化した内視鏡が開発されるに至り、内視鏡は多くの脳神経外科疾患に応用されるようになっている。当教室は日本神経内視鏡学会や同技術認定委員会とも深い関わりを持っており、全国の神経内視鏡認定医と協力しながら、どのような疾患に神経内視鏡が応用できるのか、どのような手術器具、内視鏡が脳神経外科手術に必要であるかについて更に研究を進め、脳神経外科手術に特化した内視鏡機器や内視鏡画像の研究を進めていく。

4)脊椎・脊髄疾患に対する取り組み

 超高齢化社会を迎え、脊椎・脊髄疾患は増加の一途をたどっており、当教室の手術件数の1/3以上を脊椎・脊髄疾患が占める。当教室では通常の各種脊椎変性疾患、胸腰椎圧迫骨折に加え、腰椎変性後側弯症、脊髄血管障害、脊髄腫瘍など高度の技術を要する手術も多数施行しているが、合併症発生率が非常に低いことが最大の特徴である。また、当教室には日本脊髄外科学会理事も在籍しており、全国レベルの臨床研究など積極的に進めている。

5)脳血管内治療への取り組み

 硬膜動静脈瘻は中高年に発症する動静脈シャント疾患であり脳血管内治療が第一選択の治療法となっているが、その病態は完全に解明されているわけではない。また、これまで神経放射線学的にシャント部位と流入及び流出血管に基づく臨床的分類がなされ治療適応、治療方法等が検討されてきたが、難解であると言わざるを得ない。我々は硬膜動静脈瘻患者の三次元画像に血流動態解析を融合させることによって疾患の重症度分類について新しい概念を構築することができ、病態把握に貢献できるのではないかと考えている。検査結果を検討することによって疾患の進行機序の解明や治療適応および最適な脳血管内治療方針について明確にすることも期待できると考えており、自験例を集積して研究を深めていく。