教室紹介

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呼吸器内科学教室Respiratory Medicine

スタッフ紹介

教育重点及び概要

 呼吸器内科の特徴として、肺癌、感染症、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、喘息などのアレルギー性疾患、肺線維症を中心とした拘束性疾患、睡眠時無呼吸、呼吸不全など、病態が多岐に渡ります。疾患数が多く、他臓器の疾患に合併・併存することも多く、患者数も莫大で、生命予後とも密着し、専門的な知識と技術も必要とされています。呼吸器内科では、この状況に対処すべく、各分野のプロフェッショナルを配置し、大学病院に相応しい高度な医療を満遍なく提供できる診療を確立しており、教育にも生かしています。医学生の診療参加型実習でも、プレゼンテーションの体験や、症状や所見の評価、呼吸生理評価、胸部画像読影などの実習を通して、呼吸器診療力を身につけていけるよう指導しています。
 また、高齢化社会を背景に、呼吸器疾患患者は年々増加する一方、全国的に専門医が不足しており、呼吸器科内科医の養成は急務です。呼吸器専門医を育成していくことが最重要ではありますが、高齢化社会では、より広域的で多角的な診療のバックボーンをもつことも重要であり、専門性を維持しつつ、幅広く診療に取り組めるような教育を心掛けております。
 大学院教育においては、専門診療、基礎研究、臨床研究を広く網羅しており、多様で柔軟な個別指導と教育により、様々に自己啓発できるアカデミックな環境を提供し、各人の充実したキャリアパス形成に役立てます。呼吸器全般の領域で最先端の診療に取り組み、基礎・臨床医学の知識や技術を統合できる高度な研究能力を育て、強い探究心と忍耐力、倫理観をもつphysician scientistを育成していくことが、継続した大きな目標であります。

研究分野及び主要研究テーマ

 現在の研究の一端を紹介しますが、新規研究を立ち上げたり、多施設共同研究に参加したり随時していますので、今後興味を持って一緒に取り組んでいただける先生方をお待ちしています。

1.気管支喘息における基礎的研究

  1. 新規アレルゲン特異的舌下免疫療法の開発:
     現在行われている喘息の標準治療は、すべて対処療法で治癒に至るものではありません。最近、根治療法としてアレルゲン特異的免疫療法が注目され、アレルギー性鼻炎に関しては舌下免疫療法が開始されましたが、日本では喘息に対しては有効性が認められていません。そこで、マウスの喘息モデルを用いて有効性の高い治療法開発を目指して研究を行っています。
  2. 気管支喘息の病態形成におけるIL-5の役割に関する研究:
     喘息の病態形成に好酸球が重要な役割を果たしていることが知られています。好酸球の増殖分化因子であるIL-5に関して、IL-5受容体欠損マウスを用いて喘息病態における役割を研究しています。

2.間質性肺炎における免疫学的検討

 好酸球性肺炎および特発性肺線維症に関して気管支肺胞洗浄液中の液性因子および細胞成分を解析し、その免疫学的病態に関して研究しています。今後、肺線維症のマウスモデルを作成し、新しい治療薬の開発に関して研究する予定です。

3.がん免疫研究および免疫抗体療法の開発

 免疫腫瘍学(岡三喜男特任教授)と多施設共同研究で、世界的にも競争が激しい肺がんに対する免疫チェックポイント療法の臨床効果を予測およびモニタリングするバイオマーカーを探索し、成果をあげています。さらに検索するがん種を拡大して、新しいバイオマーカーの概念を提唱したいと考えています。また日本発の新規免疫抗体療法の多施設共同臨床治験も進行中であり、その免疫微小環境の解析にも取り組んでいます。

4.抗酸菌感染症の病態解析と新たな診断・治療法の開発 

 結核の感染診断法としてIGRAがありますが、この問題点として結核感染時期が鑑別できない点があげられます。感染時期が鑑別できるような新たな診断法を開発しようとしています。また、非結核性抗酸菌症の原因菌も多数あり、菌種によりとる病態も近年変化して来ています。菌種別の臨床像のまとめ、さらにはMACやM.abscessusといった難治性の原因菌に対するこれまでの治療法の問題点や新たな治療の導入も考えています。

5.呼吸器疾患におけるアウトカム研究

 これまでCOPDや喘息を中心に、呼吸困難や健康、症状といった患者報告型アウトカムや、呼吸機能や運動能力といった生理学的アウトカムなどの評価法や評価意義を解明するアウトカム研究を多く海外誌に報告し、ガイドラインを改定するなど、世界をリードしてきました。呼吸器疾患全般において、アウトカム研究を通して、患者管理の向上や臨床試験の基盤形成に貢献し、日本の臨床研究の成果を世界の診療に還元することを目標にがんばっています。