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免疫学教室Immunology and Molecular Genetics

スタッフ紹介

教育重点および概要

 免疫系は感染防御機構を担う高次生命機能であり、侵入した病原体等の外来抗原を非自己と認識して排除する精緻な仕組みである。一方、免疫系の異常・破綻により免疫不全症、癌、アレルギー、自己免疫疾患が発生する。また、近年、従来免疫と無関係と考えられていた肥満症、動脈硬化、精神疾患などにも免疫・炎症が深く関与することが明らかとなった。さらに、免疫学の進歩とその臨床応用に伴い、抗サイトカイン抗体、免疫チェックポイント阻害薬を代表とした免疫調節療法が広く臨床現場で用いられるようになった。そのため、医学生が臨床医学を学ぶに当たって免疫学の理解を深めることが必須となっている。
 新型コロナウイルス感染症の流行により、「免疫」という言葉が身近な用語となった。しかし近年の技術の進歩によって蓄積された免疫学の知見は膨大であり、免疫学は初学者には取っ付きにくく難解となっている。そのため、医学生の教育においては、臨床医となるために必要な基本事項の理解を第一目標とする。特に免疫系の仕組みと疾患の病因・病態との関連、対応する免疫調節療法を理解することが重要である。免疫学と臨床医学との関連に注目した「臨床免疫学」の教育に力を入れる。
 また、免疫学の知見は、ELISAやフローサイトメトリーなど種々の臨床検査に応用されている。講義期間中の免疫学実習でそれらの免疫学的検査を体験し、免疫学の知識、臨床検査、基礎研究手法を体系づけて学ぶ。

研究分野および主要研究テーマ

  • 1)遺伝性自己炎症性疾患の病態解明
    自然免疫に関わる遺伝子の病的多型により炎症病態を呈する疾患群として、近年「自己炎症異性疾患」という概念が提唱された。疾患に関わる遺伝子多型が同定されてはいるものの、その遺伝子多型が炎症を惹起する機序については十分に分かっていない。教室では、自己炎症性疾患でみられる遺伝子多型を導入した疾患モデルマウスを用い、病的多型による炎症誘導・遷延化機序を解析している。現在までに、自己炎症性骨疾患Cherubism、またTNF受容体関連周期熱症候群の解析を行っており、その他にも新規自己炎症性疾患の遺伝子解析を進めている。
  • 2)炎症性皮膚角化症「乾癬」とメタボリック症候群・脂肪肝炎との炎症連関の解明
    炎症性皮膚角化症「乾癬」の患者では、肥満症/高脂血症/脂肪肝炎などの合併が多いことが知られている。当教室では、それぞれの疾患のモデルマウスを用いて、それらのメタボリック症候群関連病態がどのように皮膚の炎症を悪化させるか、また逆に皮膚の炎症がメタボリック症候群関連病態をどのように悪化させるかについて解析している。現在までの解析でメタボリック症候群の病態ごとに異なる炎症惹起機序が活性化していることが分かり、その知見は皮膚を含む各種炎症病態に対する個別化治療(Precision medicine)への応用が期待される。
  • 3)サイトカインコンポーネントEBI3の免疫・炎症疾患における役割の解明
    EBI3はヘテロダイマーサイトカインのコンポーネントで、p28、p35、p19と結合し、それぞれIL-27、IL-35、IL-39として機能する。EBI3の各種免疫・炎症疾患における役割を明らかとするため、当教室ではEBI3変異マウスを用いた解析を行っている。EBI3を標的とした新規治療戦略への応用が期待される。