教室紹介

CATEGORY

脳神経外科学1教室Neurosurgery 1

スタッフ紹介

教育重点と反省

 脳神経外科学とは「脳、脊髄、末梢神経系およびその付属機関(血管、骨、筋肉など)を含めた神経系全般の疾患の中で主に外科的治療の対象となりうる疾患について診断、治療を行う医療の一分野」と定義されている。そして神経系全般をカバーすべく脳神経外科には脳血管障害、脳腫瘍、脊椎・脊髄、機能、小児、外傷など多くのサブスペシャルティーが存在する。脳神経外科の特徴として「脳」という神秘的な臓器にメスを入れることのできる唯一の診療科であること、各分野で目覚ましい発展があること、手術以外にも様々な歩み方があり多様性があることを挙げることができる。脳神経外科医にはアップデートされた知識、洗練された技術、一社会人としての自覚が必要で当科ではこれらバランスのとれた人材育成を目指している。そのために各段階で以下のような教育に重点を置いている。

1)医学部教育

 第1学年の脳神経・感覚器の講義では「外傷、血管障害、腫瘍」の概説を行い、第3学年での神経系の講義では「中枢神経の放射線学的診断」、「頭蓋内圧亢進症状の診断と治療」、「脳血管障害の診断と治療」、「血管内治療の実際」、「脳腫瘍の診断と治療」、「頭部外傷の診断と治療」、「機能的脳神経外科の診断と治療」、「小児脳神経外科の診断と治療」を取り上げ基本的知識の定着のみならず動画を供覧し理解が深まるように工夫している。第4学年と第5学年では1週間のベッドサイド実習を2-3人のグループ分けて行っている。月曜日から木曜日は病棟実習、手術の見学と手洗い実習、カンファレンスの参加を行い、金曜日は教授による総括ならび懇話を行っている。第6学年では1カ月間の参加型ベッドサイド実習と9月に2時間の集中講義を行い脳神経外科疾患の総復習を行っている。

2)卒後教育

 初期研修期間に脳神経外科をローテートする研修医はできるだけ多くの患者さんを担当し、手術や周術期管理を経験できるようにしている。当科は脳神経外科専門研修プログラム基幹施設であり3つの連携施設と7つの関連施設でプログラムを構成している。各施設の特徴を活かしながら専攻医が有意義な研修ができるように配慮している。2023年5月現在5名の専攻医が当科で研修を行っている。

3)脳神経外科主催ハンズオン

 学生、初期研修医、専攻医を対象とした脳神経外科ハンズオンを開催している。内容としては腰椎穿刺、内頚動脈内膜剥離術、血管内手術、血管吻合、頭蓋骨ドリリングのハンズオンを行っている。学生・初期研修医にとっては実際に脳神経外科手術を体感することで脳神経外科への関心を高めるきっかけになり、専攻医にとっては手技の向上につなげることができる機会になっている。
ハンズオン風景

研究分野及び主要研究テーマ

 当科ではもやもや病、内頚動脈狭窄症、慢性硬膜下血種を対象に臨床研究を行っている。

1)もやもや病

 日本での多施設共同研究により自然歴、病態、手術の効果に関する多くの知見が得られ、現在もやもや病はパラダイムシフトを迎えている。現在当科は以下の多施設共同研究に参加している。

  • AMORE (Asymptomatic Moyamoya Registry):無症候性もやもや病の予後と治療法の確立を目指した多施設共同研究
  • MACINTOSH (Moyamoya disease with Aggressive Clinical course in Infants for Safety and Healthy Growth) Study:乳幼児もやもや病の病態、診断、治療に関する多施設調査
  • Moyamoya P-Choc (Periventricular Choroidal Collateral) Registry:脈絡叢型側副路を有するもやもや病の多施設共同登録研究
  • Supra Japan (Study of Unilateral Moyamoya Disease Progression and Associated-Gene in Japan):片側もやもや病の進行と遺伝的要因に関する患者登録研究

2)内頚動脈狭窄症

 内頚動脈狭窄症の原因となるプラーク量と頚動脈の形態や血流との関連を検討している。

3)慢性硬膜下血腫

 術後再発に関与する因子として血液型A型や末梢血好酸球増加が関与することを明らかにしたが(Hirai S, et al. J Neurosurg 135: 1203-1207, 2021, Matsubara M, et al. J Neurosurg Jan 13, 2023)、さらに新たなバイオマーカーを検討している。軽症から中等症の両側慢性硬膜下血種に対し片側の手術を行った際の対側病変の自然歴の調査を多施設前向き研究として行っている。