教室紹介

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形成外科学教室

スタッフ紹介

教育重点及び概要

 形成外科は身体表層を取り扱う外科学の一分野であり、紀元前インドで行われた「切り取られた鼻を再建する手術」が最初の記載です。以後、外科医は外傷や熱傷、皮膚腫瘍に対処してきました。19世紀に入り麻酔学が発達した結果、腹腔内、胸腔内、頭蓋内などが直視下に治療できるようになり、外科学は各々の専門分野に発達していきました。そして体表の組織欠損や形態異常、あるいはそれに伴う機能障害を外科的手段をもって修復再建する分野が形成外科として残されました。それゆえ、形成外科は最も古く、そして最も新しい分野であるといえます。
 当教室は、全国でも最も早く開設された形成外科学教室の一つであり、数多くの実績を重ねて参りました。診療体系は主に、(1)先天性外表異常(唇裂・口蓋裂)、(2)外傷(熱傷、顔面外傷、四肢外傷)、(3)マイクロサージャリーによる再建、(4)乳房再建、(5)難治性潰瘍(褥瘡、慢性潰瘍)、(6)美容外科といった6部門に分かれています。
 このように、形態あるいは外観の改善に形成外科の本質的な特徴があることから、創傷治癒に関する基礎的知識、手術における組織の取り扱いの原則、縫合など手術の基本手技、皮膚や骨・軟骨の移植についての知識が必須であり、卒前教育は特にこれらのことを主眼にしています。学生に対する形成外科関連の講義時間や臨床実習期間は非常に限られていますが、形成外科は厚生労働省が定める基本診療科のひとつであり、創傷治療は重要な項目であります。したがって「創傷治癒の基本」と「熱傷の局所処置」に重点をおいて効率的に臨床実習及び講義を行っています。形成外科の各論ともいうべき「慢性創傷、形成外科基本手技、先天性外表異常、瘢痕拘縮、皮膚腫瘍、外傷、再建外科、整容医療」といった専門領域については、初期臨床研修医を対象とした卒後教育において取り組んでいます。
 日本は超高齢社会となり、さらにAI(人工知能)の進化により、今後求められる医療や体制も大きく変化していくと思われます。当科では形成外科学の基礎である創傷治療を基本に据えつつ、社会的ニーズに柔軟に対応しながら高度な医療を提供し、形成外科学に対する理解度を深めた医師の養成に注力し、地域医療に貢献して参ります。

研究分野及び主要研究テーマ

a. 創傷病態生化学

 基礎研究では、肥厚性瘢痕やケロイドの形態学的、生化学的な研究を中心に、瘢痕組織の電顕的観察、プロテオグリカン、肥満細胞及びケミカルメディエーター、コラーゲンやその架橋、フィブロネクチンの創傷治癒や老化による量的質的変化、ヒト表皮細胞の培養条件の検討、SODと創傷治癒の関わり、遊離表皮細胞の皮内移植後の動態に関する研究を行ってきました。また臨床研究では、難治性下肢潰瘍に関する新しい診断・治療アルゴリズムの開発を行っており、近日中に世界に向けて発表する予定です。

b. 顎顔面再建外科に関連した研究

 霊長類の顔面に分布する動脈系について、血管造影とその主体的解析及び樹脂鋳型の観察により、顎顔面の再建外科に重要な血管系の解剖学的研究を行っています。

c. 皮膚・骨移植に関する血管神経の研究

 新しい有茎皮弁や遊離皮弁移植の開発、マイクロサージャリーによる血管・神経の接合に関する基礎的研究が中心で、特に移植後の筋肉の形態学的検索や神経再生過程の生化学、形態学を追及しています。

d. 軟骨基質への特異的送達技術に関する研究

 ポリアルギニンが有する、軟骨基質への特異的集積性に着目し、軟骨組織へのドラッグデリバリーシステムの開発を目指しています。現在は、ポリアルギニンを結合させたアグリカナーゼ阻害酵素を遺伝子工学的に合成し、関節炎モデルマウスに投与して、その有効性を検討しています。将来的には、成果を軟骨再生につなげていきたいと考えています。
 形成外科は臨床医学そのものですが、その発展に基礎的研究は欠かすことはできません。臨床業務が中心となるスタッフにおいても、リサーチマインドを失うことなく、常に臨床に即した研究を目指すよう意識しています。これによって、科学的証拠に基づいた形成外科的治療が飛躍的に発展することを目標としています。