
スタッフ紹介
教育重点及び概要
COVID-19の世界的流行により、「公衆衛生学」は改めて社会的な注目を集めるようになった。一方で、公衆衛生学がどのような分野であるかを一言で説明することは、必ずしも容易ではない。臨床医学の多くの診療科は「臓器」に基づいて構成されているため、科目名から研究内容や診療内容を比較的想像しやすい。それに対し、公衆衛生学が扱う領域は極めて広範である。そのため、一般の方のみならず、医師や医学生からも「何を扱う学問なのか分かりにくい」と言われることがある。
私自身は、公衆衛生学を「人々が健康で幸せに生きていくためにはどうすればよいかを探究する学問」であると考えている。公衆、すなわち多くの人々が健康で幸せに生活するためには、医学のみならず、経済学、政治学、国際関係学、文化人類学など、多様な学問分野との協働が不可欠である。病気を治すことは医療の重要な役割であるが、それだけでは十分ではない。病気に至った背景や原因を明らかにし、病気を予防するための方策を考え、それを個々の患者さんにとどまらず、社会全体へ広く伝え、実装していくことが求められる。病気の原因の解明から予防、さらにその知見を国内外へどのような仕組みで広めていくか、までを対象とする一連の学問領域が、公衆衛生学であると考えている。
学部教育では、主に4年次の「予防医学」において、公衆衛生学概論に加え、感染症予防、国際保健、地域保健、生活習慣病対策、医療福祉などに関する講義を担当している。また、2年次の「医学研究の扉」では、後述する研究テーマに基づき、公衆衛生学的研究の基本について学ぶ機会を提供している。6年次には、医師国家試験に関連する公衆衛生学領域の講義を実施している。
大学院教育では、臨床研究に必要な疫学の基本について共通科目として開講している。また、専門科目として「国際保健・生態疫学」を開講し、後述する研究テーマに基づいた研究指導を行っている。
研究分野及び主要研究テーマ
本学の公衆衛生学教室は、臨床医学部門に配属されている。多くの大学において「公衆衛生学」は「応用医学」あるいは「社会医学」などに分類されているが、本学では「臨床」の中に位置付けられた「公衆衛生学」として、さまざまな疾患の原因を探り、予防のために何が必要かを明らかにする研究を行っている。
公衆衛生学の研究分野は多岐にわたるが、私の専門領域は国際保健学である。研究分野も国際保健を中心としながら、附属病院健康診断センターで実施している予防接種に関する研究や、人間ドック受診者を対象とした研究なども実施している。現在取り組んでいる主な研究テーマは以下の通りである。
1)開発途上国における高齢者の健康に関する研究
主にタイのチェンマイ地域及びナコーン・パトム地域において、高齢者の心身の健康に関する調査研究を実施している。本研究は、現地のチェンマイ大学、マヒドン大学に加え、大阪大学、北海道大学、津田塾大学等と共同で進めている。
2)開発途上国における食・栄養と健康に関する研究
カンボジアにおける小学生の衛生・栄養に関する調査、及びネパール山岳地域の住民を対象とした栄養教育と健康指標に関する研究を実施している。
3)各種予防接種実施後の抗体持続に関する研究
健康診断センターで予防接種を受けた学生を対象に、接種後の抗体価を追跡調査し、抗体持続に関する研究を実施している。
4)Vaccine Hesitancy、すなわちワクチン忌避に関する研究
主にCOVID-19ワクチンに関するワクチン忌避とその関連要因について、アンケート調査の手法を用いて解析している。
5)ロコモ健診受診者の骨折予後に関する研究
健康診断センターで実施しているロコモ健診の受診者を対象に、骨折リスク評価の指標や骨折予後と生活習慣との関連について調査・解析を行っている。
その他、臨床研究における疫学・統計解析に関する相談も随時受け付けている。

