教室紹介

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眼科学2教室Ophthalmology 2

眼科学2教室

スタッフ紹介

教育重点及び概要

 眼科は2つの教室に分かれていますが、眼科学1は川崎医科大学附属病院、眼科学2は岡山市中山下にある川崎医科大学総合医療センターでそれぞれ眼科診療を担当しており、いずれも視覚に関連する視器・附属器および神経の構造解剖、生理、病理を系統的に教育します。眼科学2教室では特に、斜視、弱視、眼球運動、神経眼科、屈折・調節の異常などの眼機能学に重点を置いた眼科学の講義や実習を行うことで、眼科学の総合的学習を進める上で役割を果たしたいと考えています。

研究分野及び主要研究テーマ

 主な研究テーマは斜視弱視診断・治療法の改良、学童期の近視進行抑制法の開発です。国内の大学では現在、眼機能学を主な研究テーマとする眼科教室は限られています。しかし米国をはじめ海外では、眼科医ばかりでなく大学で専門教育を受けたオプトメトリスト達によって、研究活動が盛んになっています。社会的な高いニーズがあるにもかかわらず、国内では専門家が不足しています。この研究領域に焦点を絞った研究活動をすることで、学問上の貢献を果たすと共に、確固としたスペシャルティーを持った眼科臨床医を育てていきたいと考えています。この研究領域は、川崎医療福祉大学感覚矯正学科と重なっており、全国から豊富な症例が集まる総合医療センター眼科外来を研究フィールドと位置づけ、共同研究を推進していきたいと考えています。以下に代表的研究テーマを示します。

a)アジャスタブル斜視手術の改良

 斜視の有病率は人口の2~3%といわれ、患者は両眼視機能の異常と整容的問題の二つのハンディキャップを背負っています。斜視手術では、外眼筋の眼球への付着部を一定距離移動させることにより、原因となる視線のずれ(眼位)を矯正し、ハンディキャップを解消することができます。しかし眼位は、外眼筋の長さや収縮力だけでなく、眼筋周囲組織の粘弾性、眼窩プリーの位置、眼軸長など、複数の生体パラメータのバランスの上に定まっており、さらに脳神経に直結しているため、同一術式で手術をしても、矯正効果は症例ごとに異なるものになります。このため、これまで報告された斜視手術の成功率は必ずしも高いものではなく、しばしば再手術が必要になりました。
 アジャスタブル斜視手術は、矯正効果に係わるこれら患者側、術者側の不確定要素を、術後に行う糸の調節により一挙に解決しようとする術式です。特に定量困難な難治、再手術、神経麻痺症例においては威力を発揮すると考えられています。

b)近視進行抑制治療の確立

 学童期に近視進行や眼軸長の過伸展を抑制することは、高度近視に失明のリスク軽減につながり、社会的にも医療経済的にも重要な研究テーマです。これまで私たちは、近視進行抑制治療の確立を目指し、計4回のランダム化比較対照試験を実施し、データの一部はEBMを実践する情報インフラとして名高いCochrane共同計画に掲載されています。現在は院内において、中・強度近視学童を対象とする低濃度(0.01%)アトロピン点眼液による5度目のランダム化比較対照試験を実施中です。