教室紹介

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呼吸器外科学教室General Thoracic Surgery

スタッフ紹介

教育重点及び概要

 講義科目としては、1学年の良医の礎、人体の構造と機能でそれぞれ1コマ、3学年の呼吸器ユニットで呼吸器手術療法・縦隔横隔膜疾患・気胸の4コマ、4学年の腫瘍ユニットで腫瘍随伴症候群の1コマを担当する。講義には、図表・手術映像・レントゲン写真を多用し理解が深まるよう努めている。そのほか、2学年の医学研究への扉では一人の学生を担当し、4学年の症候論では、胸水・呼吸困難・咳・痰・血痰を担当する。また、6学年の集中講義では国家試験の過去問題を解説し、知識のまとめと解答へのアプローチ法について指導をしている。
 4-5学年の臨床実習では、2~3名の小グループで5日間の実習を行う。実習期間が短いため、初日のオリエンテーションにおいて実習期間中の到達目標を明示し、それまでに習得している知識の復習と問題解決能力の向上、あわせて必修問題対策に力を入れている。学生はスチューデントドクターとして、指導医―研修医とともにチームを形成し実際の診療にあたる。学生は病歴・身体診察・検査所見をまとめて診療録として学生用電子カルテに記入し指導医の添削を受ける。また、毎日の回診では担当患者の状態について指導医に報告し、問題点を抽出しながら解決策について討論を行う。実習の最後には過去の国家試験や模擬試験から選択した問題による達成度確認試験とともに、担当患者の理解について教授試問も行っている。実習期間において特に力を入れているのは、学生自らが考える姿勢を持つこと、そして考えた結果を論理的に表現することである。

研究分野及び主要研究テーマ

 現在の主な研究テーマは以下のとおりである。

  1. 肺癌組織における各種分子マーカーに基づいた個別化治療の研究
  2. 肺癌組織における局所免疫機構とその臨床的意義に関する研究

 外科診療に携わる研究者が、研究を進めるうえで最も有利な点は腫瘍組織を豊富に手に入れることができることにある。当教室では、外科的治療で切除した組織検体を有効に活用し、臨床的な課題をテーマにした研究を継続してきた。分子マーカーに基づく個別化治療の研究では、腫瘍組織におけるVEGFやCOX-2の遺伝子多型が予後に影響を与えることを国内外の学会や論文で発表した。近年ではさらに、臨床でも応用されている免疫チェックポイント阻害薬の効果予測因子とされるPD-L1の発現と他の分子マーカーや遺伝子変異との関連性を解析し、その臨床的意義について研究を進めている。すでに大規模臨床試験を実施したものもある。非小細胞肺癌の術後補助化学療法に関する多施設共同無作為化比較試験において、肺癌組織内のDNA修復因子の発現と予後との関連を検討する付随研究を主導し、これらDNA修復因子を解析することにより補助化学療法の個別化の可能性を示唆するデータを発表した。肺癌組織における局所免疫機構に関する研究では、腫瘍細胞の局所での免疫逃避機構に関する基礎研究を続けており、さらにそこで得られた結果を実際の肺癌組織で検証を行い、その成果を国際学会や論文で発表してきた。
 このように当教室では、肺癌細胞の発育転移過程において複雑に関与しあうシグナル伝達経路や免疫機構を分子学的に多面的に解析する研究を継続的に行っている。医学研究科においても、臨床に直結した研究を指導している。地道な研究を重ねることで癌克服への手がかりとなりうるような研究成果をあげていきたいと考えている。