教室紹介

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救急医学教室

救急医学教室

スタッフ紹介

教育重点及び概要

 当教室は、昭和52年1月、全国で最初の救急医学講座として誕生した。診療部門としての救急部は昭和51年4月に始まり、昭和54年には岡山県で最初の救命救急センターに指定され、平成7年からは高度救命救急センターに指定された。当初から、大学附設の救命救急センターであるにも関わらず、軽症から重症まで全ての救急患者を受け入れており、この方針は現在も変わらない。救急医学教室の教育目標は、医師の基本的診療能力である鑑別診断能力と救命処置能力を身に付けさせること(プライマリ・ケアにおける初期対応能力)であり、そのために医学生・初期臨床研修医・後期臨床研修医教育を行うものである。
 卒前教育の医学部第4学年に行われる「救急」ブロック講義は、Ⅰ.救急医学・医療の総論的領域、Ⅱ.救急における重要な症状・症候、Ⅲ.重篤外因性疾患を中心とした領域、Ⅳ.各科救急領域他、の4分野(計31単位)からなる。これらの授業を通して救急医学・医療の必要性とあるべき姿を理解し、患者の訴えと身体診察から鑑別診断を行うとともに急変する患者の救命処置法の基本を学ぶ。さらに、病院前救急医療の分野としてドクターカー・ドクターヘリ、災害医学とDMAT(disaster medical assistance team)、MC(medical control)と救急救命士制度について学ぶ。また、多発外傷、重症熱傷、急性中毒、各種ショック、意識障害など、重篤な救急疾患の初期診療と重症患者管理についても病態生理を中心に学ぶ。第5学年では、救急科・高度救命救急センターにおいて1週間の病院実習を行っている。
 初期臨床研修医は、2ヶ月間の救急科・高度救命救急センターへのローテーション中に軽症から重症までの救急患者診療を救急科専門医の指導の下に経験することができる。また、救急に関してさらに充実した内容の研修を希望する者には追加で数ヶ月の選択研修期間を設けている。
 後期研修医には、新専門医制度の救急科専門医研修プログラムの他に、minimum requirements充実コースを設けて、救急医を目指さない医師であっても救急患者診療を数ヶ月単位で経験できるコースを準備している(https://h.kawasaki-m.ac.jp/kcet/data/kcet_program_003/kcet_second_dtl/を参照のこと)。このコースでは、24時間体制で軽症~重症を含む全ての救急患者の診療を行い、この中で救急外来診療(ER初期診療)と重症患者管理(critical care)を中心とした実地臨床研修を行っている。
 また、平成13年度からは全国初のドクターヘリを運航し、岡山県および近県における病院前救急診療に貢献している。

自己評価と反省
 我々のプログラムの到達目標は“医師ならば誰もが身に付けておくべき救急外来における基本的診療能力、及びプライマリ・ケアにおける初期対応能力”を習得させることであり、その目的達成のための行動目標として6つのminimum requirements(①common diseaseが診療できる ②緊急度・重症度の判断ができる ③手術適応の判断ができる ④心肺蘇生ができる ⑤外傷の初期診療ができる ⑥地域医療に貢献できる)を提示している。そして、医学生の教育にもこのプログラムの教育理念を組み込んでいきたいと考えている。
 特に、第5学年の臨床実習においては、診療参加型臨床実習の導入によりminimum requirementsを身に付ける機会を与えたいと考えているが、そのためには実習期間延長などのカリキュラム変更などが必要となるため大学側への働きかけが必要である。また、このような医学教育を行うためには教育スタッフを充分にする必要があり、この点に関しても優れた人材のさらなる確保・育成が必要である。

研究分野及び主要研究テーマ

 急性中毒患者の毒劇物分析、外傷患者に対するacute care surgery、ドクターヘリに関する全国レジストリー参加およびその疫学研究等をテーマとした臨床研究を行っている。

1)日本外傷データバンクへの外傷患者登録と登録データを用いた臨床研究;

 外傷患者のデータを登録するとともに、そのデータを用いた様々な研究を行っている。

2)外傷患者に対するacute care surgeryの遂行;

 Trauma surgeryの質的向上を図る一つの方法としてacute care surgeryの概念が生まれてきた。その臨床経験を外傷データとして蓄積・整理しており、それを疫学研究に役立てる。

3)ドクターヘリの効果検討;

 平成13年度から本格運用を開始したドクターヘリであるが、地域外傷患者の救命効果などについて検討を加える。またドクターヘリ搬送症例の効果検証のための全国レジストリーに参加する。そのデータを今後の疫学研究に活用したい。

4)敗血症の早期診断と至適治療法におけるReal-time PCR法とバイオマーカーの有用性に関する研究;

 敗血症が疑われる患者に対し、小児科学教室の協力を得てReal-time PCRを行い、プレセプシン、プロカルシトニンとの菌血症の早期認知に関する検討を行っている。

5)岡山県における急性期重症小児の疫学調査をもとにした適切な集約化の検討;

 岡山県の消防機関および各医療機関に調査を行い集中治療を必要とする小児患者の絶対数を調査し集約化に向けた疫学的検討を行う。

6)重症外傷の疫学的研究

7)重症敗血症の疫学的研究

8)急性肺損傷(ALI)/急性呼吸促迫症候群(ARDS)の疫学的研究

9)肺炎球菌・レンサ球菌・黄色ブドウ球菌による重症敗血症の多施設共同観察研究

10)広範囲熱傷の初期輸液に関する多施設共同無作為化非盲検比較対照試験

 以上の6)~10)は救急医学会が主導する多施設共同研究であり、委員会施設として研究の立案、計画、データ収集、解析に参加している。

11)急性一酸化炭素中毒レジストリーCarbon monoxide Poisoning in Japan(COP-J)study;

 山口大学を主施設とする多施設共同研究に参加している。

自己評価と反省
 上記1)~12)は臨床研究であり、いずれもデータの蓄積があるにも関わらずそれに見合った論文発表がまだできていないのが反省点である。今後は疫学研究を積極的に行い学会発表のみならず、誌上発表を行えるように環境整備を行っていきたい。

将来の改善方策

 教育に関しては、我々が必要と考える医師の基本的臨床能力(プライマリ・ケアにおける初期対応能力)を身に付けさせるために学生から後期研修に至るまでの包括的プログラムを作成したところであり、この教育プログラムの成果を最大限に発揮するための教員の確保が極めて重要である。
 もう一つは教員の教育に関することであるが、スタッフには教育理論を学ぶ機会を与えて質の高い教育ができるようにしたい。研究に関しては、現在、大学院生が在籍していないため、診療に携わる医師が中心となって主として臨床研究を行う方針である。日常診療業務に必要な医師の絶対数が充足されない限り研究に必要な時間を確保することができない。魅力ある臨床、教育、研究環境を整備し、学生、研修医にアピールして人員の増強を進めていきたい。