産学連携知的財産管理室

KMS メディカル・アーク2017 

2017年2月15日(水)川崎医科大学 8階大講堂にて「KMSメディカル・アーク2017」が開催されました。

室長 衛生学 大槻 剛巳

<本文は、川崎医科大学研究ニュース90号に掲載予定です。>

 本誌No.88 (2017年2月24日発刊)に、2016年度より発足した産学連携知的財産管理室(産知室)の紹介記事を紹介しました。この発刊の時には、産知室として学内で実施した最も大きな行事であったKMSメディカル・アーク2017が終了した直後で、メンバー全員、それでも盛会裏に終了したメディカル・アーク2017の余韻に浸っていた時期でしたが、ここに改めて報告をさせていただきます。
 KMSメディカル・アークは、産学官連携の展示会という位置付けでした。研究者からのシーズ紹介、企業からの製品と得意分野さらにはニーズ紹介、加えてメディカルスタッフの皆様からの臨床の現場でのニーズ紹介を、それぞれに行っていただくとともに、産学官連携活動に関連する講演会を併設する企画でした。

 県内で考えますと岡山大学では全学体制で2008年度から「知恵の見本市」、さらには鹿田キャンパス(医学部、歯学部と病院があります)で2013年度から「医療展示会 中央西日本 メディカル・イノベーション」という産学官連携を主目的とした展示会が開催されていました。また、吉備地域産学官連携知的財産活用ネットワーク(No.88; p18-21, 2017参照)の構成大学として参画してくださっている岡山県立大学では「OPUフォーラム」が開催されており、福山大学では「福山大学研究成果発表会」を展開されております。また岡山理科大学でも「OUSフォーラム」が開催されています。現在のわが国の中で、大学のもって いる知の財産を、産学官連携活動につなげることにより、市場に流通する商品の開発を行うことは、ひいてはその商品の対象者となる人々に幸せを運ぶ仕事にもなり、また、産学官の関係する組織団体企業などが、ウィンウィンで何かを成し遂げていくということになります。その発芽とマッチングの場を提供するのが、こういった産学官連携の展示会・エキシビションとなります。

 川崎医科大学としても、産知室体制が整備される前から、勿論、現在の室員である大槻(衛生学)や山内(生化学)がそれぞれに県内あるいは国内の種々の組織に参画し、内容的にも、また展示会の質としても国内では最も充実しているBioJapanなどにも出展をしてきました。
 しかし、産知室が正式に学内で発足したこと、あるいは吉備地域産学官連携知的財産活用ネットワークの参画大学でも実施されていることもあって、ネットワークの幹事大学である本学でも開催する、かつ、医科大学で実施することの強みとしては、附属病院と総合医療センターを要していることと考えて、より医系の産学官連携シーズに特化し、さらにはメディカルスタッフの皆様からの臨床現場のニーズを紹介していただくこと、その上で、ネットワーク参画大学(上記の2大学に加えて、川崎医療福祉大学、さらに準メンバーとしての就実大学[薬学部を中心に])からの研究シーズの紹介もご依頼することにしました。

 さらに企業からの出展については、本学がここ数年、連携をもってきた県内の産学官連携、特に医工連携に関連する「メディカルテクノおかやま」、「岡山県医用工学研究会」さらに「おかやま生体信号研究会」、加えてすでに2014年1月に学内でも展示会を催していただいた「メディカルネット岡山」、さらには「医療機器プロモートおかやま」などにご協力を得るとともに、医工のみでなく、健康をキーワードに栄養や福祉といった側面での展示もお願いしたいということで、岡山県産業振興財団の方々にお願いして福祉機器のクラスターである「ハートフルビジネスおかやま」、食や農を中心に生理活性物質研究を進めている「おかやまバイオアクティブ研究会」などのご協力を仰ぎました。特に「医療機器プロモートおかやま」の代表の方からは積極的なご協力を頂戴し、関西や関東  など県外の企業あるいは製造販売資格を持たれている企業などへのお声掛けを実施してくださいました。
 さらに、学校法人川崎学園が包括連携協定を結んでいます倉敷市・総社市そして備前市にもお願いして、出展していただきました。  構想は産知室発足当初の6月くらいから発案し、8月下旬くらいから上記の概要を練った上で、種々ご挨拶等に「メディカルテクノおかやま」のコーディネータ氏のご協力を得ながら回っていき、また、附属病院や総合医療センター(当時は、附属川崎病院でしたが)の業務連絡会や各部門の長の方々へのご説明などをさせていただきました。

 加えて、共催組織の各方面にも、コーディネータさんのご尽力もあって、ご挨拶等々にも伺うことができましたし、医療現場のニーズ紹介については、倉敷中央病院のご協力を得られることとなりました。
 そうやって準備をしている間にあっという間に、晩秋から初冬となり、2月15日の開催まで数えるばかりとなってきました。
 さて、当日、本館棟8階大講堂で、産知室メンバーは緊張の面持ちで開始時刻を待っておりました。各大学の研究者から25シーズ、そして企業は県内外から20社、自治体3市、そして県内医工連携クラスター2グループからの出展とともに、倉敷中央病院を含めて附属病院、総合医療センターから計59の現場ニーズのご発表をいただくことになりました。

 10時から開催、この時は特段のセレモニーもせず、最初の2時間ばかりは、出展の方々あるいはご来場の方々に自由に見て回っていただく時間としました。
 そして、お昼時になって、学長先生にご挨拶をいただいた後に、ランチョン・セミナーの形式で、産学官連携のご講演を、株式会社テクノネットワーク四国、技術移転部マネージャーである辻本和敬氏に「儲けるための産学連携~研究を事業に応用するには!~」と題して行っていただきました。またランチョンは、倉敷市からたこ飯、総社市から赤米おにぎりと総社ドッグ、備前市から備前バーガーをご提供いただきました。その後も、自由閲覧の時間とさせていただき、16時からは研究者シーズの発表の時間(Tea-Time Presentation Hour)として、参画5大学からポスターでもご提示していただいているシーズを1件ずつ、口頭でご発表いただきました。この時には附属病院栄養部と製品開発の共同研究をされている県内企業さんからのワッフルも提供させていただきました。

 そして終了の18時まで、それでも17時以降にも白衣等をまとわれたドクターやメディカルスタッフの方々が来場され、企業の方にとっても、病院と一体化した建物の中での会場であったことで、そういった医療従事者とひと目でわかる人たちとコミュニケートできるといった状況が、貴重な経験にもなったと伺いました。
 川﨑理事長先生もご来場下さり、盛況な様子をお認めいただきました。さらに広報連携室のご努力のおかげで、倉敷ケーブルTVや、NHK岡山放送局を含む5社のTV局と、2社の新聞社など、マスメディアからも注目を集めることができ、夕刻の各局のニュースでは現場の映像や、シーズ出展してくださった学内(産知室メンバーの衛生学・西村准教授)の先生の研究テーマの紹介など、電波ジャックとまではいきませんが、各局のローカルニュースで放映されましたし、山陽新聞では翌日に、毎日新聞では、数日後に紙面の2/3程度の地域特集記事として取り上げていただきました。

 入場者は出展企業やマスメディアを含めて、学外59名、学園内306名にいたり、盛会裏に終了できましたことは、学内そして附属病院の教職員の皆様のおかげと思います。改めて感謝の意を表したく存じます。
 また、特に企業の機器やパネル、その他の搬入と撤収については産知室メンバーを含む研究支援係の皆様に全面的なご協力をいただき、本当に助かりましたことも附記させていただきたく思います。

 そして、実際にはイベントとしての成功も必要なことですが、これが産学官連携のマッチングの機会の位置付けであるとすれば、相互に興味を惹かれたシーズやニーズに対して、その後に連携活動が推進可能かどうかが、展示会の成否につながります。終了直後から研究支援係のメンバーを中心に、アンケート調査に基いてさらなるマッチングの場を設けることの努力を行い、本稿の執筆時点、晩春の頃ですが、いくつかの企業がメディカルスタッフからのニーズに興味を示して下さって、良好な関係を築くことができたなら、製品開発にまでつながる可能性の発芽が感じられる案件も仄かに見えてきているようです。参与である本地氏やネットワークのアドバイザーである西山氏のご協力を受けながら、本番である事後の対応に全力を注いでいる現状です。

 KMSメディカル・アーク2018は、おそらく2月7日に開催の予定です。皆様、ぜひ奮ってご参加、ご発表をお願いします。また附属病院、総合医療センターのメディカルスタッフの皆様にも、一層のご協力をお願い致したいと存じます。
 本稿にいくつかの当日の写真を添えております。その時の様子を観ていただきながら、2018に向けて皆様ご準備の程、よろしくお願い致します。