M6PR/IGF2R二重ノックアウトは、ムコリピドーシスII型およびニーマン・ピック病C2型に対する治療法の開発につながる


リソソーム酵素のM6P化と、M6Pレセプターによるそれら酵素のリソソームへの輸送はリソソーム機能の維持において重要なプロセスです。リソソーム酵素のM6P化が障害されるとムコリピドーシスという疾患(mucolipidosis II/III, I-cell disease)を発症します。
ムコリピドーシスではリソソーム酵素のM6P化が障害されているものの、それを輸送するM6Pレセプター系は正常に保たれています。M6Pシステムに輸送を依存するリソソーム酵素は数十種類に渡るため、治療アプローチにおいて単一の酵素補充療法の組み合わせは実用的ではありません。私たちは以前、正常細胞からM6P化されたリソソーム酵素の混合物を回収し、ムコリピドーシス細胞へ投与することで細胞機能が回復することを確認済です(Otomo T, et al. J Biol Chem 2011)。それにより、ムコリピドーシスに対する酵素補充療法のコンセプトは示されましたが、リソソーム酵素の混合物を回収する方法には改善が必要でした。
今回私たちは、M6Pレセプター(2種類:M6PRとIGF2R)をダブルノックアウトした細胞(dKO cell)を樹立しました。dKO細胞はM6P化には障害はありませんが、その輸送系に障害があるため、ムコリピドーシスと同様に細胞外へリソソーム酵素を排出し続けます。dKO細胞が培養上清中に排出したリソソーム酵素をムコリピドーシス細胞へ投与すると機能が改善することが確認できました。また、リソソーム酵素のみならず、M6P経路で輸送されるリソソームタンパク質のひとつ、NPC2タンパク質も上清中に排出され、それを投与されたNiemann-Pick C2細胞は機能を回復しました。M6P化の障害であるムコリピドーシス細胞が細胞外に排出するタンパク質のプロファイルと、M6Pレセプターの障害であるdKO細胞が細胞外に排出するタンパク質のプロファイルは非常に類似しており、dKO細胞の上清はムコリピドーシスにおいて欠乏しているリソソーム酵素やタンパク質(群)を過不足なく補充できるリソースとなりうると考えられます。


M6PR/IGF2R double-knockout supplies therapeutic sources for mucolipidosis II and Niemann-Pick C2.
Fujita T, Terawaki S, Moriwaki T, *Otomo T.
J Biol Chem. 2026;302(10):113511.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0021925826023835