トリクラベンダゾールは細胞のグリコサミノグリカン(ムコ多糖)レベルを抑制する 〜 ムコ多糖症およびムコ多糖症関連疾患の治療薬候補

ムコ多糖症、ムコリピドーシス、ムコ多糖症プラス症候群等では、グリコサミノグリカン(GAG)が蓄積することで細胞の機能低下と全身症状をきたすと考えられています。我々は米国食品医薬品局(FDA)に承認されている約2,000種類の既存薬をスクリーニングすることで、GAGを減らす効果のある薬剤トリクラベンダゾールを同定しました。トリクラベンダゾールは米国では抗寄生虫薬として承認・使用されていますが、日本では未承認の薬剤です。

私たちはゲノム編集技術(CRISPR/Cas9)を用いてムコ多糖症I型、II型、VI型、VII型、ムコリピドーシスII型等の疾患モデル細胞株を作製し、また細胞実験系においてヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸等の幅広いGAGのコア蛋白を検出する方法を立ち上げました。これらを組み合わせ、トリクラベンダゾールはこれらの疾患モデル細胞において幅広い種類のGAGを減少させることを確認しました。
さらに、トリクラベンダゾールはムコ多糖症プラス症候群の患者細胞おいてもGAGを減少させ、細胞内の異常なエンドライソゾームを減少させました。ムコ多糖症プラス症候群のモデルマウスを作製したところ、胎生早期に致死となることが判りましたが、妊娠中の母親マウスの飲水中にトリクラベンダゾールを混ぜて投与すると、出産直前まで胎児が成長することが確認されました。

以上の結果から、トリクラベンダゾールはGAGの代謝異常によって発症するムコ多糖症やムコ多糖症関連疾患の治療薬候補になると考えられます。本成果を受け、私たちは今後治療薬開発研究を進めていきます。


Triclabendazole suppresses cellular levels of glycosaminoglycan—A potential therapeutic agent for mucopolysaccharidoses and related diseases.
Terawaki S, Vasilev F, Sofronova V, Tanaka M, Mori Y, Iwata R, Moriwaki T, Fujita T, Maksimova N, *Otomo T.
iScience, 2025, 28(8): 113118
DOI: https://doi.org/10.1016/j.isci.2025.113118