
ようこそ 免疫腫瘍学講座を訪問いただきありがとうございます。
今年、本講座は6年目を迎えることになります。これまで多くの方々から多大なご支援を頂き、混迷する国内および国際情勢の中でも、どうにか研究を継続できることに喜びと責任を感じています。2022年は3年ぶりに国際学会(ウィーン、ボストン)に出席し、研究成果を発表することができました。現地でしか得られない多くの情報や貴重な人的交流は、自らの研究を客観的にみることができる絶好の機会になりました。しかし、がん免疫研究において日米の大きな格差を改めて実感し、個人では解決できない大きな課題を突きつけられました。
さて新型コロナ感染症のパンデミックは、3年を経過しても未だ勢力は衰えず猛威をふるっています。この間、画期的なコロナワクチンと抗ウィルス薬の開発にも関わらず、ウィルスは変異を繰り返して免疫をすり抜け、社会と現代医学を翻弄させています。いまこそ感染症におけるヒト免疫学(Human Immunology)の研究と成果が求められています。この分野において、日本の研究者の奮起を期待しています。
この5年間、がん免疫療法は免疫チェックポイント阻害薬が多くのがん種に適応拡大され、標準的がん治療薬として確立しつつあります。一方、がん種や国によっては承認を取り下げる阻害薬があるほど、その効果が疑問視されている事実もあります。また免疫チェックポイント阻害薬と他薬剤との併用療法によっては、その効果が確認できない臨床試験を散見します。このような憂慮すべき事実は、基礎研究を飛び越え臨床開発を急ぐ実態を反映していると推測しています。確かに、臨床的知見から基礎研究をふり返るよい機会と考えることも重要です。これからの後方視的な検証に期待しています。
日本の肺がん免疫チェックポイント療法では、ときに効果や耐性を予測するバイオマーカー不要論まで飛び出す現状に唖然とします。熟慮すれば、バイオマーカーの探索研究は新規の標的分子探索と同じ意味をもっているのです。いま、我々も研究の成果を世界へアピールする絶好の機会と考えています。
これからも最終目標に向かって、さらに努力を重ねる覚悟です。
今年も皆様からのご支援とご指導をお願いいたします。

年賀状2023
花が咲き誇る春の山々を ふと想像しました
今年、本講座は6年目を迎えることになります。これまで多くの方々から多大なご支援を頂き、混迷する国内および国際情勢の中でも、どうにか研究を継続できることに喜びと責任を感じています。2022年は3年ぶりに国際学会(ウィーン、ボストン)に出席し、研究成果を発表することができました。現地でしか得られない多くの情報や貴重な人的交流は、自らの研究を客観的にみることができる絶好の機会になりました。しかし、がん免疫研究において日米の大きな格差を改めて実感し、個人では解決できない大きな課題を突きつけられました。
さて新型コロナ感染症のパンデミックは、3年を経過しても未だ勢力は衰えず猛威をふるっています。この間、画期的なコロナワクチンと抗ウィルス薬の開発にも関わらず、ウィルスは変異を繰り返して免疫をすり抜け、社会と現代医学を翻弄させています。いまこそ感染症におけるヒト免疫学(Human Immunology)の研究と成果が求められています。この分野において、日本の研究者の奮起を期待しています。
この5年間、がん免疫療法は免疫チェックポイント阻害薬が多くのがん種に適応拡大され、標準的がん治療薬として確立しつつあります。一方、がん種や国によっては承認を取り下げる阻害薬があるほど、その効果が疑問視されている事実もあります。また免疫チェックポイント阻害薬と他薬剤との併用療法によっては、その効果が確認できない臨床試験を散見します。このような憂慮すべき事実は、基礎研究を飛び越え臨床開発を急ぐ実態を反映していると推測しています。確かに、臨床的知見から基礎研究をふり返るよい機会と考えることも重要です。これからの後方視的な検証に期待しています。
日本の肺がん免疫チェックポイント療法では、ときに効果や耐性を予測するバイオマーカー不要論まで飛び出す現状に唖然とします。熟慮すれば、バイオマーカーの探索研究は新規の標的分子探索と同じ意味をもっているのです。いま、我々も研究の成果を世界へアピールする絶好の機会と考えています。
これからも最終目標に向かって、さらに努力を重ねる覚悟です。
今年も皆様からのご支援とご指導をお願いいたします。
2023年1月吉日
岡 三喜男
岡 三喜男

年賀状2023
花が咲き誇る春の山々を ふと想像しました
ようこそ 免疫腫瘍学講座を訪問いただきありがとうございます。
いまだ世界中で新型コロナ感染症の猛威は衰えず、既に二年が経ちます。当初から、人類は歴史的経験によって、本感染症は波状的に感染拡大を繰り返し、数年で収束すると予想されていました。しかし、予想は的中しても世界が一致団結して行動し、この難題を克服するには至っていないのが現実です。幸い1918年のスペイン風邪(インフルエンザA型のパンデミック)に比べ、その犠牲者数は約10分の1に留まっていますが、この100年間の飛躍的な医学的進歩にも拘わらず、いま世界規模で数百万人の犠牲者がでています。将来、この経験を糧に世界は次の新興感染症に対し、即時に対応できることを願うばかりです。
一方、このパンデミックによってワクチンや中和抗体など、市井でも免疫関連用語が認知されるようになりました。とくにmessenger RNAワクチンについては、長年のがんワクチン研究が新型コロナ感染症のパンデミックによって、予想外に早くその臨床的有用性が確認されたことは画期的でした(徒然集「ワクチンの起源と進化」)。いまmessenger RNAワクチン開発の本来の目的であるがん領域への応用研究が進んでいると聴いていますが、その臨床応用の範囲は無限に拡大すると期待しています。同時に、新しい免疫学の発見や概念が生まれると確信しています。
さて今年、我々の肺がん免疫チェックポイント療法におけるバイオマーカー研究は、一般実用化へ向け最終段階に進みます。2021年末、産学共同で開発した日本発かつ世界初の本バイオマーカーの測定装置は、ごく少量の血液を用い、全自動で迅速、かつ信頼性の高い検査法です。その最終目標は、本バイオマーカーが世界的に実用化され、人類の幸福に貢献することにあります。このような実用化の経験は、多くの臨床医にとって一生に一度あるかないか極めて稀な絶好の機会です。
この寄附講座は2018年、がん研究を幅広く支援されている個人により開講されましたが、これまでの約15年間、我々はがん抗原に対するヒト免疫応答を詳細に検討した中から、がん免疫療法の効果を予測する血清バイオマーカーを特定し、さらに多くの支援者に支えられ臨床応用へ向け研究を重ねてきました。この場をかりて支援して頂いた皆様に御礼を申し上げます。
いよいよ最終目標に向かって、さらに努力を重ねる覚悟です。
今年も皆様からのご支援とご指導をお願いいたします。

年賀状2022
厳冬の庭先に “はるみ” が鈴なりに実っていました
いまだ世界中で新型コロナ感染症の猛威は衰えず、既に二年が経ちます。当初から、人類は歴史的経験によって、本感染症は波状的に感染拡大を繰り返し、数年で収束すると予想されていました。しかし、予想は的中しても世界が一致団結して行動し、この難題を克服するには至っていないのが現実です。幸い1918年のスペイン風邪(インフルエンザA型のパンデミック)に比べ、その犠牲者数は約10分の1に留まっていますが、この100年間の飛躍的な医学的進歩にも拘わらず、いま世界規模で数百万人の犠牲者がでています。将来、この経験を糧に世界は次の新興感染症に対し、即時に対応できることを願うばかりです。
一方、このパンデミックによってワクチンや中和抗体など、市井でも免疫関連用語が認知されるようになりました。とくにmessenger RNAワクチンについては、長年のがんワクチン研究が新型コロナ感染症のパンデミックによって、予想外に早くその臨床的有用性が確認されたことは画期的でした(徒然集「ワクチンの起源と進化」)。いまmessenger RNAワクチン開発の本来の目的であるがん領域への応用研究が進んでいると聴いていますが、その臨床応用の範囲は無限に拡大すると期待しています。同時に、新しい免疫学の発見や概念が生まれると確信しています。
さて今年、我々の肺がん免疫チェックポイント療法におけるバイオマーカー研究は、一般実用化へ向け最終段階に進みます。2021年末、産学共同で開発した日本発かつ世界初の本バイオマーカーの測定装置は、ごく少量の血液を用い、全自動で迅速、かつ信頼性の高い検査法です。その最終目標は、本バイオマーカーが世界的に実用化され、人類の幸福に貢献することにあります。このような実用化の経験は、多くの臨床医にとって一生に一度あるかないか極めて稀な絶好の機会です。
この寄附講座は2018年、がん研究を幅広く支援されている個人により開講されましたが、これまでの約15年間、我々はがん抗原に対するヒト免疫応答を詳細に検討した中から、がん免疫療法の効果を予測する血清バイオマーカーを特定し、さらに多くの支援者に支えられ臨床応用へ向け研究を重ねてきました。この場をかりて支援して頂いた皆様に御礼を申し上げます。
いよいよ最終目標に向かって、さらに努力を重ねる覚悟です。
今年も皆様からのご支援とご指導をお願いいたします。
2022年1月吉日
岡 三喜男
岡 三喜男

年賀状2022
厳冬の庭先に “はるみ” が鈴なりに実っていました
ようこそ 免疫腫瘍学講座を訪問いただきありがとうございます。
日本に新型コロナ感染症が初めて流入してから、もう一年が経ちますが、その勢いは増大するばかりです。今後、日本でのオリンピック2021開催も危ぶまれ、しばらく人類はコロナとの闘いに奔走することになり、その中心に立つのが医学です。偶然にも、私も免疫(語源は疫病から免れる)という共通の場で研究していますが、その違いは内在抗原(がん抗原)と外来抗原(病原体)にあります。しかし意外にも、がんの約15%は、ピロリ菌(胃がん)やヒトパピローマウィルス(子宮頸がん)を代表とする感染症によって誘発される事実があり、ただ驚くばかりです。
さて、この寄附講座は2018年、がん研究を幅広く支援されている個人により開講されました。この3年間、がん免疫研究の研究成果と他のがん種への共同研究の組織作りに奔走し、2020年に日本発かつ世界初の新規バイオマーカーの測定系を産学共同で確立しました。ごく少量の血液を用い、全自動、簡便、迅速(17分)、信頼性の高い検査法で、肺がん免疫チェックポイント療法の効果を予測する検査法です。近い将来、肺がん以外の多くの免疫チェックポイント療法の効果予測にも応用されます。
今年、開講4年目を迎え、いよいよ新規バイオマーカーの測定試薬の開発を加速し、実用化に向かって多施設共同臨床研究へ進みます。また新しいがん種での新規バイオマーカーも見出しつつあり、ここは心機一転、さらに研究に邁進する覚悟です。
今後も皆様からのご支援とご指導をお願いいたします。

年賀状2021
ようこそ 免疫腫瘍学講座を訪問いただきありがとうございます。日本に新型コロナ感染症が初めて流入してから、もう一年が経ちますが、その勢いは増大するばかりです。今後、日本でのオリンピック2021開催も危ぶまれ、しばらく人類はコロナとの闘いに奔走することになり、その中心に立つのが医学です。偶然にも、私も免疫(語源は疫病から免れる)という共通の場で研究していますが、その違いは内在抗原(がん抗原)と外来抗原(病原体)にあります。しかし意外にも、がんの約15%は、ピロリ菌(胃がん)やヒトパピローマウィルス(子宮頸がん)を代表とする感染症によって誘発される事実があり、ただ驚くばかりです。
さて、この寄附講座は2018年、がん研究を幅広く支援されている個人により開講されました。この3年間、がん免疫研究の研究成果と他のがん種への共同研究の組織作りに奔走し、2020年に日本発かつ世界初の新規バイオマーカーの測定系を産学共同で確立しました。ごく少量の血液を用い、全自動、簡便、迅速(17分)、信頼性の高い検査法で、肺がん免疫チェックポイント療法の効果を予測する検査法です。近い将来、肺がん以外の多くの免疫チェックポイント療法の効果予測にも応用されます。
今年、開講4年目を迎え、いよいよ新規バイオマーカーの測定試薬の開発を加速し、実用化に向かって多施設共同臨床研究へ進みます。また新しいがん種での新規バイオマーカーも見出しつつあり、ここは心機一転、さらに研究に邁進する覚悟です。
今後も皆様からのご支援とご指導をお願いいたします。
2021年1月吉日
岡 三喜男
岡 三喜男

年賀状2021
この講座は2018年4月、がん研究を幅広く支援されている方の寄付により開講されました。その目的は、がんの臨床および基礎の医学研究を通して、世界のがんで病める人々の幸福を追求することにあります。
いま高齢社会となった日本では、加齢病ともいえるがんは二人に一人が罹り、三人に一人はがんによって命を落としています。さらに世界では1,800万人が罹り、950万人ががん死しています。いずれも約半数が、人口の多いアジアに集中しています。
がんの研究は、がんの発生から診断と治療へと幅広い分野にわたります。しかし長年、われわれは内科医の立場からがん治療に従事してきたことから、2004年まで母校の長崎大学で抗がん剤耐性の臨床および基礎研究を平行して行い、2005年から私の転任に伴って長崎大学時代からの旧知である故中山睿一教授(岡山大学、腫瘍免疫学)とがん免疫療法の研究を始動し、いまも脈々と継続しています。いま回想すれば臨床医として、がん免疫療法が隆盛となった今日を予測しての方向転換でした。
この間、我々は二人三脚でがん抗原を中心にその発現とがん患者の免疫反応の解析、がんワクチンの臨床試験、さらに世界初の制御性T細胞を標的にした抗体免疫療法、術前免疫療法など、いずれも先駆的な臨床と基礎研究を行ってきました。これらの研究は臨床と基礎が完全に融合し、多施設共同での理想的な体制で実施されました。まさに患者を中心においた、医学研究の手本でもありました。
2018年10月、がん免疫療法は本庶佑先生のノーベル賞受賞を契機に、世界中が注目しその話題は過熱しています。しかし、がん免疫療法の歴史は古く、1891年にWilliam Coleyががんワクチン(Coley’s toxins)を開発したことに端を発し、脈々とがん免疫の臨床と基礎の研究が続けられ、次々に大発見がありました。2010年、遂に免疫チェックポイント阻害薬のイピリムマブ(抗CTLA-4抗体)が、これまで最も予後不良であった悪性黒色腫患者の長期生存を可能にしました。その後、ニボルマブとペンブロリズマム(抗PD-1抗体)が多くのがん種で患者の予後を改善する結果が報告され、がん免疫療法はがん治療の柱のひとつに位置するようになりました。
現在、われわれは臨床研究に軸足をおいて、がん免疫療法の効果や予後を簡便に予測しモニタリングするバイオマーカーの探索研究に取り組み、いま成果をあげつつあります。これら二人三脚での成果は、日本発かつ世界初となり、新しい診断薬の開発によって画期的なバイオマーカーの概念を提唱しようと考えています。
私の持論は、情報通信技術が発達した今日では、研究は地方にあっても大都会にあっても、その研究の場によって研究レベルや発信力に差はなく、その差は発想力と研究者間の和であると信じています。これからも多くの共同研究者の知を結集し、日本から世界へ、全ては病める人のため医学研究を推進していきます。
今後も皆様からのご支援とご指導をお願いいたします。
(2018年11月吉日)

川崎医科大学 免疫腫瘍学(寄付講座)
特任教授 岡 三喜男
前呼吸器内科 主任教授
【略歴】
1979年
長崎大学医学部卒業、長崎大学医学部附属病院研修医
1980年
長崎市立市民病院研修医
1981年
長崎県離島医療圏組合 五島中央病院内科
1983年
長崎大学医学部附属病院内科(内科学第二講座)
1986年
長崎逓信病院内科(NTT)
1987年
高知県立西南病院内科(現:幡多けんみん病院)
1990年
長崎大学医学部附属病院助手(内科学第二講座)
1991年
内科治療部(Medicine Branch)
がん治療部門(DCT, Department of Cancer Treatment)
米国国立がん研究所(NCI)、米国国立衛生研究所(NIH)
がん治療部門(DCT, Department of Cancer Treatment)
米国国立がん研究所(NCI)、米国国立衛生研究所(NIH)
1996年
長崎大学医学部講師(内科学第二講座)
2000年
長崎大学助教授(大学院医学研究科感染分子病態学)
2003年
長崎大学医学部・歯学部附属病院呼吸器内科副科長
2004年
川崎医科大学 呼吸器内科学 主任教授
2018年4月
川崎医科大学 免疫腫瘍学(寄付講座) 特任教授