【咳外来について】


 川崎医科大学呼吸器内科を初めて受診する患者さんの約65%は、「咳」を訴えています(下図)。この苦痛となる「咳」から、患者さんを速やかに解放することは、われわれ呼吸器内科医の使命のひとつです。
 2006年、このような臨床的背景から、全国で初めて「咳外来」を開設しました。2007年には、咳の原因として多い、好酸球性炎症である咳喘息や気管支喘息の診断に有用な呼気一酸化窒素測定器を岡山県で最初に導入しました。呼気一酸化窒素の測定は、精度も高く、患者さんの負担も少なく、数分で完了します。その結果、咳の迅速な診断と治療が可能になりました(日呼会誌 49(3):156-160, 2011)。現在、感染症においても迅速診断の可能性を研究しています。
 「呼吸は鼻腔から肺胞まで」「呼吸器科医は鼻腔から肺胞まで診る」を基本に、研修医時代に習得した「副鼻腔写真の読み方」を教室員へ伝授し、全員が副鼻腔疾患を見逃さないように教育しています。実際、日本人に多い副鼻腔気管支症候群の診断と治療については、我々が積極的に関わっています。胃食道逆流症(GERD)の診断には、Fスケールなどの問診票を活用していますが、やはり咳の詳細な問診がより重要のようです(下図:特徴、期間、経過)。
 2010年12月、川崎学園は「禁煙宣言」を発しました。喫煙は慢性咳嗽の最大かつ重要な原因です。咳外来の基本は、まず喫煙歴から始まり、降圧薬の服用内容を聴取します。呼吸器科医として、禁煙の推進は社会的義務であり、当科でも禁煙外来を充実させました。一方、最新のコンピューターソフト(LungVision)を用いて、胸部CTによる肺気腫の定量的解析をしています。この解析が禁煙推進に大きく貢献することを期待しています。
 今後、咳の診断と治療における独自のアルゴリズムを策定します。
(岡 三喜男)