小橋 吉博

   呼吸器感染症全般、特に抗酸菌感染症で長期にわたる経過観察が必要となる患者が外来に多数来院している。抗酸菌は大きく結核菌と非結核性抗酸菌の2種類に分けられているが、院内感染上、大きな問題となる結核は減少傾向にあるものの、当施設においても年間10例以上はみられている。こうした結核が潜在している状態を早期に知る診断法としてQuantiFERON TB-2G (QFT-TB 2G)が2005年4月から商品化されたことから、当院においても接触者検診や結核との鑑別診断に実施している。これらの診断法を利用して、潜在性結核を早期に診断することにより、結核の撲滅を目標に日々の臨床に励んでいる。また、もう一つの問題点として、非結核性抗酸菌の中にMycobacterium avium complex(MAC)が存在する。この微生物は結核菌と異なり、ヒトからヒトへ感染はしないものの、中年女性の中葉・舌区に好発し、小葉中心性陰影、気管支拡張像を呈しやすい傾向がある。従来からある抗結核薬には有効性が30%台しかみられず、慢性に進行するため、現時点では有用性がない症例には、無治療で経過観察のみとしているのが現状である。こうした肺MAC症は、近年増加傾向にあり、唯一、有用性が確かめられているClarithromycin(CAM)を増量させた治療を今後行いたいと考えている。