エンドサイトーシスに関わる新しい輸送複合体の同定と、それによる複数のエンドサイトーシス経路の異なる制御

学振の外国人特別研究員で当教室に留学されたVasilev博士が開始した、教室のオリジナルワークがようやくアクセプトされました。

私たちはライソゾームに興味を持ち研究を行っています。ライソゾームはオートファジーの働きで細胞内から運ばれてくる物質や、エンドサイトーシスの働きで細胞外から運ばれてくる物質の分解を担っています。これらは小胞輸送と呼ばれ、基質を内部に含む小胞が融合することでライソゾームへ運ばれます。小胞の融合を制御するHOPSやCORVETと呼ばれるテザリング(繋留)複合体が知られておりよく研究されています。今回私たちはこれらHOPSとCORVETのハイブリッドタイプの複合体が2つ哺乳類細胞において形成されることを示し、さらにこのHybrid複合体はピノサイトーシスを促進するものの、レセプター介在性エンドサイトーシスには働いていないことを示しました。

これは、新規複合体の発見とともに、異なった取り込み方のエンドサイトーシス経路がそれぞれ独立して存在し、輸送制御も別々に行われている点を明らかにしたことが新しく、今後のエンドサイトーシス研究に一石を投じる重要な成果であると考えています。

HOPS, CORVET and newly-identified Hybrid tethering complexes contribute differentially towards multiple modes of endocytosis
Terawaki S, Vasilev F, Moriwaki T, *Otomo T.
Sci Rep, 2023;13(1):18734.
https://www.nature.com/articles/s41598-023-45418-3

エディターから紹介文を書くよう推薦をうけました。こちらもご覧ください。
Nature Communities: Cell & Molecular Biology
Behind the Paper
The Tethering Complex Revisited: Discovery of New Complexes Regulating Vesicle Fusion in Endocytic Pathways


少し難しいので概要を図にまとめてみました。