加藤 茂樹

禁煙外来:
平成22年4月より川崎医科大学附属病院にて保険診療による禁煙外来が始まりました。今回禁煙外来を担当することになりました。禁煙に興味のある方はお気軽にご相談ください。

タバコ煙に関する基礎知識
  1. ニコチン、タール、一酸化炭素がタバコ三悪
  2. 喫煙者は一酸化炭素によって組織の酸素欠乏が起こり、全身に多くの傷害を受けている(心臓、血管、胎児の発育など)。
  3. タールによる発がん(肺がんなど)。
  4. ニコチンは脳に作用し、依存症を形成する。
  5. 肺においてはタバコ煙により過剰な免疫反応が起こり、組織傷害を来し、慢性閉塞性肺疾患になる(咳、痰、息切れなど)。

気管支喘息:
気管支喘息は慢性の気管支炎の1つです。この慢性炎症を放置しておくと季節の変わり目やカゼをひいた時などに発作(ゼーゼー、ヒューヒュー)を起こします。1回の発作で窒息死することがある怖い病気です。発作を起こさないためには日頃の治療(吸入ステロイド療法)を根気強く続け、慢性気管支炎を治療しておくことが大切です。外来にて詳しくご説明いたしますので、気軽にご相談ください。



『最近の研究から』
  1. 気管支喘息における末梢気道病変とその治療
    気管支喘息は、生理学的には可逆性の気道狭窄と気道過敏性の亢進が特徴的であるが、基本的病態として気道の慢性炎症が存在する。活性化好酸球およびインターロイキン5の発現が中枢気道より末梢気道に多く認められ、気道のリモデリングも末梢気道で顕著にみられるなど、これらの気道の慢性炎症は、中枢気道のみならず末梢気道にも存在することが報告されている。このように近年、気管支喘息における気道炎症の場として末梢気道が注目されている。一方、喘息治療の第一選択薬である吸入ステロイド薬は、薬剤の種類、剤型により薬剤の粒子径が異なる。粒子径の大きな薬剤は、末梢気道まで到達しない可能性がある。呼吸機能検査にて末梢気道の閉塞所見のみが残存する喘息患者に粒子径の小さな吸入ステロイド薬を使用したところ末梢気道の閉塞所見が改善し、QOLの向上が認められた。症例ごとに適した吸入ステロイド薬を用いることにより治療効果の向上が期待できる。




  2. 好酸球性肺炎における気管支肺胞洗浄液中のガレクチン9の検討
    肺好酸球症の中で原因不明の特発性のものを好酸球性肺炎と呼んでいる。さらに、臨床経過から急性好酸球性肺炎(AEP)と慢性好酸球性肺炎(CEP)に分けられる。近年、好酸球遊走活性を有する新規生理活性物質としてガレクチン9が同定された。好酸球性肺炎患者の気管支肺胞洗浄液中(BALF)のガレクチン9を測定したところ、健常人(HV)およびサルコイドーシス(SAR)に比べてAEPおよびCEPともに顕著に増加していた。一方、好酸球遊走因子として知られるエオタキシンはAEP優位に増加しており、ガレクチン9は好酸球性肺炎の病態形成にエオタキシンとは異なる機序で関与していることが推測される。