2009年 呼吸器内科同門会誌・年報「表紙絵解説」(3月吉日発刊)

「夏のひととき」

岡 三喜男


 微風もない夏のひととき、遠くに稲が青々と育ち、近くに川辺の葦が生い茂っている。ふと立ち寄った道端の「お地蔵さん」、建立されて間もなく五十年になる。やや伏せた眼差しは、土地の人々をやさしく見守ってきた。だれともなく通りすがりに立ち止まって合掌、いつしか「お地蔵さん」には季節の花と茶水が供されると云う。
 「夕立やお地蔵さんもわたしもずぶぬれ」、山頭火は仏を身近に感じたのだろうか。お地蔵さんは津々浦々にあって、日本人のこころ安まる所である。私の生まれた田舎のお地蔵さんは人々の憩いの場、「じゃまた、お地蔵さんで会おう」、なにより童の遊び場であった。
 一瞬、「お地蔵さん」が絵の中から微笑みかけているようにみえた。