がんセンターNEWS 2012 新年号
(平成24年1月発行)

「世界初の肺腺がん治療ワクチンをめざして」

呼吸器内科部長
岡 三喜男


 大学の使命は医療人の育成、地域医療への貢献、医療技術の開発による国家への貢献です。呼吸器疾患は肺がん、感染症、喘息、喫煙肺、睡眠呼吸障害など多岐に渡っています。全てを網羅的に修得することは困難ですが、各分野に専門医を配置して地域医療に貢献しています。病気は予防からを掲げ、予防医学に注力しています。禁煙外来を週3回設け、肺炎球菌ワクチンを強力に推進しています。その結果、ワクチン接種実績は全国大学病院の上位5位にあります。呼吸器疾患の診断には気管支内視鏡検査による正確な診断が要求され、超音波内視鏡や胸腔鏡を積極的に導入しています。
 肺がんは、世界的にも悪性腫瘍の中で罹患率が高く予後の悪い疾患です。我々は、肺がんの中で最も頻度の高い腺がんに高率に発現する癌抗原XAGE分子を同定しました。肺腺がん患者の多くがXAGEに対し強い免疫反応を示し、がんワクチン療法の良い標的になることを報告しました。現在、世界初の肺腺がんペプチドワクチンの製造を完了し、来年度、川崎医大を中心にライデン大学と米国スローンケタリングがんセンターで臨床試験を計画しています。肺がんワクチンに関する情報は、ホームページで逐次公開しています。
 我々の夢は、世界の病める人々のため医学的に貢献することです。
(川崎医科大学呼吸器内科ホームページ http://www.kawasaki-m.ac.jp/resp/