教育活動

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概要

医学を学ぶには人体の構造の理解が不可欠であり、このため解剖学教室は、肉眼から細胞·分子レベルまでの生命体の階層的構造に関する科目を担当する。令和1 年度から始まった現行カリキュラムでは、『人体の構造と機能1』コースとして、1 年生1学期の「人体構造入門」の授業から始まり、 2 学期、 3 学期にかけては生理学と連携して「骨学実習」、「人体解剖実習」、「組織学実習」、そして「脳神経学実習」を並行して器官別ユニット形式に統合的教育を行なう。また平成26年度からは 5 年生の「診療の基本」の中で令和元年度からは「臨床解剖」として臨床解剖実習を行い、7学年が履修を終えた。

人体の構造と機能Iコース:1年生

1年生の各ユニットは、解剖学、生理学、臨床系関連各科が分担して共通の教科書を用い、具体的には、1学期に「人体構造入門」において人体構造の概略を学んだ後、2学期の“人体解剖実習”と3学期の“脳神経実習”の実習内容に合わせ、「呼吸器・消化器」、「泌尿器・生殖器」、「皮膚・運動器」、「循環器・内分泌」、「脳神経・感覚器」の各臓器別ユニットをマクロからミクロ、生理学を織り交ぜ、更に“組織学実習(顕微鏡実習)”を組み込む構成である。令和3年度は60分の授業が1年生は全843コマあるが、そのうち講義106コマ、実習196コマを、また2年生の講義7コマと5年生は実習15コマを担当している。この他、1年生のリベラルアーツⅠ「ソフィーの世界:医学生のための哲学講座」(樋田;12コマ)、2年生の「医学研究への扉」において“応用解剖実習”を始めとして、毎年複数の課題で10名程の学生を受け入れている(5週間)。

生命の尊厳の重要性を深く理解し、学習の姿勢を確立することを目的に、1年生から解剖学教育を始めている。これは本学の建学の理念“人間(ひと)をつくる。体をつくる。医学を究める。”に基づく医学教育の実践である。「人体構造入門」は人体の基本的知識の修得と系統的理解を目標とし、『人体の構造と機能I』コースの臓器別ユニットでは、従来の肉眼解剖学と組織学が並行し、人体解剖実習の日程に沿って、学生の知識の断片化や重複がないよう、各教室のスタッフが十分に意見交換している。更には器官別ユニットに関連して臨床系13教室の協力を得て、臨床から見た解剖生理の重要性を講義する。また1年生全寮制を活かし、学年・小グループ担当教員、大学事務、寮、健康支援センター関係者とも密接に協力している。

診療の基本;臨床解剖実習:5年生

5年生の臨床解剖実習は、外科系12教室の協力を得て、専門ごと外科系教員と解剖学教員が密接に連携して学生と共に解剖実習を行う。その過程で症状・診察・検査・診断・治療の基本となる解剖学的基礎を修得し、初学年の人体解剖以降に培った医学的知識と経験、倫理感をスチューデント・ドクターとして高いレベルで統合できるよう指導する。

篤志献体啓蒙・慰霊祭・医の倫理

人体解剖実習を通じて涵養される献体に対する感謝・畏敬の気持ちは、臨床医学における“医の倫理の出発点”として、かけがえのない重要な意義を持つ。毎年5月の解剖体慰霊祭には前年に解剖実習を行った2年生、5年生が中心となって参列し、特に2年生は受付、案内、会食、懇談、慰霊碑参拝案内など、慰霊祭実施に全員参加し、ご遺族とくすのき会(本学献体の会)会員さんとの交流を深め、献体について理解を深めている。(教室員全員)

くすのき会には、慰霊祭・年次総会の他に、樋田主任教授が入会希望者ご本人と個別面談を行っている(准教授、講師、技術員が同席)。学内にお越しいただけない方は、学外に出向いて面談を行っている。平均して入会に関するお問い合わせが1日に1〜2名あり、入会の手続きに面会が含まれた平成26年7月からの7年で、学内で188名、学外で102名の方々との面会を行った(令和3年8月現在)。これらの面会によって我々教職員は人々の思い=篤志を深く感じ、医学教育と研究の原点に立ち返り、その重責を担って教員活動を行っている。更に面会者の了解を受け、面談の状況を学生にも講話している。

1年生では、リベラルアーツの一環として、人体解剖実習を行う2学期に、『ソフィーの世界』と題した“医学生のための哲学講座”を開講している。古今東西の哲学者、医学者、文学者、小説家、そして様々な書物を紹介し、人間と生命を考え、人生、如何に生きるべきかを、受講学生と語らいながら共に探求している。(詳細はシラバス参照;樋田)

このような医の倫理教育について、求めに応じて学外でも講演を行っている。具体的には、篤志解剖全国連合会における特別講演、倉敷市教育委員会及び倉敷市教育センターにおける初等教育・中等教育の教員研修会、“リーガルサポート岡山”の成年後見人研修会、県内外各種専門学校等において講演、及び県外大学・自治体公開講座での講演の外、県内市町村役場に出向き、福祉関係への啓蒙活動協力の依頼を行っている。(樋田)

研究室配属『医学研究への扉』:2年生

平成27年度より始まった第2学年研究室配属科目『医学研究への扉』は、第2学年担当の解剖学主任教授・樋田が科目責任者となり、学年副担当の嶋准教授が補佐をし、また大森研究補助員が教務課、情報システム室と連携して事務業務を行っている。中央研究センター、中央研究部、研究支援係、教務課、教務委員会、倫理委員会と密接に連携し、主に解剖学教室が全学的なとりまとめを通年で行い、多教室連携のこの科目を実行した。(科目責任者は平成27年から令和元年度まで)

医療系学生教育(学外)と人材輩出

医療系教育には全て解剖学は必須であるが、その教育を実践できる教員が全国的に不足している状況から、平成24年度から学内外の医療系学生の解剖生理学教育に取り組んでいる。具体的には、川崎医療福祉大学保健看護学科1年生に年間60コマ(平成26年度まで)、倉敷看護専門学校看護科1年生に年間75コマ、川崎リハビリテーション学院1年生に年間15コマ、そして川崎医療福祉大学医療福祉マネジメント学部1年生に年間15コマ(平成28年度まで)、川崎医療短期大学臨床検査科に3コマ(学外は全て1コマ90分)を教室員全員で分担、このため教科書と教材を共通化し、限られた時間内で有効な結果が得られるようなカリキュラムを作成して実践した。

このような中で平成27年度からは熊野一郎助教が川崎医療短期大学准教授に、平成29年度から清蔭恵美講師が川崎医療福祉大学教授(臨床検査学科)に、園田祐治講師が川崎医療福祉大学教授(保健看護学科)に専任として転出し、現在は3名が専任で医療福祉大、医療短期大学の解剖学教育を担当し、学園内医療教育に人材を輩出している。そして令和3年10月より嶋雄一教授が久留米大学医学部解剖学講座顕微解剖・生体形成部門主任教授として転出、着任した。

教育と学生指導に関する自己評価と反省

人体の構造と機能を限られた時間の中で有効に学ばせるかが基礎医学教育の大きな課題である。現行カリキュラムにおいて1年生の教育は解剖学教室が最も多くの時間を担当し、マクロおよびミクロを統合した解剖学教室の特徴を生かし、生理学教室および関連臨床系教室の協力によって、着実に発展している。更に学生からは、科目全体、教員個別、配付教材について概ね高い授業評価を得ている。この実施経験を生かし、また学生授業評価や毎講義後の出席カードによる感想・意見などを迅速に教育に反映し、常に改善し、引き続き更に発展するよう、教育内容改善に継続的な努力を重ねている。

多くの実習を通して学生との接触の機会が多い事から、教室スタッフの大半は、学年担当、小グループ、スタディーヘルプ、学生相談などに様々に関わっており、教育と学生指導を多角的に連関して教員活動を行っている。

医学を学ぶスタート時点での学生の、多くの教育を担当する責任は重大である。このことを自覚し、本学の建学理念である人間教育の原点を常に忘れず、教室員全員が日々精進することを改めて誓うものである。

国際交流

川崎学園とOxford大学 Green Templeton College (GTC)との学術提携に基づき、主任教授・樋田が GTC のVisiting Academic Fellowとして平成29年2月より3ヶ月間、平成30年2月、そしてDepartment of Physiology, Anatomy & Genetics (DPAG)のVisiting Professor として平成30年6月にOxford大学に滞在した。この間、DPAGにて「解剖学教育」(臨床解剖学、人体解剖学、脳解剖学; John Morris教授, Zoltan Molnar教授)、GTCにて「医史学」(Mark Harrison教授, GTC Fellow & Wellcome Unit for the History of Medicine;Sir William Osler の旧宅となったGTC所有のWilliam Osler-McGovern Centreにて事蹟と史料を調査研究)、倫理学センター(Ethox Centre)にて「医の倫理」(Tony Hope名誉教授、Michael Dunn博士、Charles Foster博士)を学び研鑽を積んだ。

これらの実績により、平成30年12月にはMark Harrison教授が、平成31年2月にはZoltan Molnar教授が来学され、共に川崎医学会において講演をしていただいた。Zoltan Molnar教授においては本学学生に対する模擬チュートリアル教育を学内公開授業として行った(共にニュース参照)。また本学2年生の『医学研究への扉』においてMark Harrison教授と共同し、“The Practice of Medicine; How did Sir William Osler keep his composure in difficult circumstances?”という一貫した研究テーマで毎年度学生を指導し、医学史上著名なWilliam Osler教授について学んでいる。

新型コロナ感染症の世界的パンデミックの中、令和2年12月より堀江助教が渡英し英Oxford大学Peter Somogyi教授(Department of Pharmacology)の元で脳研究に励んでいる。

これらの貴重な経験を教育と研究の両面に反映すると共に、教室員や学内外研究者を交えた国際交流を今後益々発展したい。