脊椎・関節整形外科学教室

整形外科の特徴

整形外科の特徴をいくつかあげてみましょう。

1. 守備範囲が広い

整形外科と言えば、まず骨折、脱臼、靭帯損傷、脊髄損傷などの外傷ですが、救急外傷の実に約70%は整形外科領域です。
すなわち救急外傷の現場で、最も必要とされる科といえましょう。
一方で脊椎疾患、巧緻運動の再建を必要とする手の外科、関節疾患、小児整形など幅広い分野を扱っています。

2. 外科手術の習得が早い

整形外科入局1年目から、指導医とともに手術の修練が開始されます。
卒後6年で専門医試験を受けて、これに合格すればとりあえず一般整形外科医として独り立ちができるようになりますから、他科に比べて早いと言えるでしょう。
もちろんそれでおしまいというわけではなく、その後は自分の専門性の確立のために、絶え間ない努力が必要です。

3. 今後ますます整形外科の需要があること

近年、日本では、世界に類を見ない急激なスピードで、高齢者が増えています。
それに伴い、いわゆる老人の骨折は増加しており、整形外科的治療を要する患者は今後も増えると予想されています。
さらに加齢に伴って生じてくる変形性膝関節症や股関節症、腰部脊柱管狭窄症などの変性疾患も増加の一途をたどっています。

例えば人工膝関節患者さんのほとんどは、いわゆる使いいたみによる変形性膝関節症が原因であり、この疾患は高齢になればなるほど増加するため、米国の研究によれば、今後30年間に人工膝関節置換術(TKA: Total Knee Arthroplasty)をうける患者数(年間約50万人)は、6倍(300万人)を超えると予想されています。

このように、これから先老年人口が減少しだすまでの30年間は、整形外科の需要は増え続けることになります。
まだ若いこれからの医師が、自分の進むべき道を選択するうえで、需要が増えるか減るのか、実は非常に大事なことだと思います。

4. 治療にあたり他科からの干渉をあまり受けない

整形外科の扱う外傷・疾患は、他科とあまりかぶらないのが特徴です。
他科から干渉を受けることなく、自らの治療方針で治療を全うすることができます。

整形外科医は、いろんな性格の人たちが、それぞれの個性を生かして、仕事をすることができるふところの深い科といえましょう。
細かいことが好きならば、手の外科や脊椎の方向に進むのがいいでしょう。
救急の現場が好きなら、骨折治療を極めていくのがよいでしょう。
物を組み立てることや、理論的なことが好きな人であれば、関節専門医を目指してはいかがでしょうか。
そのほかスポーツ整形外科医や、関節鏡視下手術の専門医もあります。
いや、おれは人の生死も含めた治療をやりたいというのであれば、骨・軟部腫瘍専門医になることも可能です。

まだ、自分の進路がもう少し見えてこない方でも、整形外科の中で一緒に仕事をしていくうちに、きっと自分に合ったものが見えてくると思います。

幅広い整形疾患に対応するように2024年から脊椎・関節整形外科、スポーツ・外傷整形外科、運動器外傷・再建整形外科の3教室体制となっています。いずれの分野も日本でトップレベルの臨床能力を有しているものと自負しています。私たちの関節部門は中四国でNo.1の人工関節センターになっており、今後も発展していくよう努力を続けているところです。
現在のレベルを維持するとともに、次の世代の頼れる整形外科医をたくさん育てていくことも重要と考えています。

川崎医大の学生さん、研修医の皆さん ぜひ我々と一緒に仕事をしましょう。
沢山いればたくさんいるほど楽しく仕事ができるようになります。
男女問いません。
いつでも声をかけてください。
一緒に川崎医大の整形外科を盛り上げていきましょう!

脊椎・脊髄診療について

当教室の脊椎・脊髄診療は、日本脊椎脊髄病学会認定の脊椎脊髄外科指導医5名を中心に、頭頚移行部から腰仙椎にいたるまでのすべての脊椎疾患に対応しています。

代表的な疾患として、腰椎椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症に対しては、各種神経ブロック、内服保存治療、手術治療(主に内視鏡や顕微鏡を用いた低侵襲脊椎手術)を実施しています。低侵襲脊椎手術は、術後疼痛など患者さんの負担を軽減し、入院期間の短縮、早期の社会復帰が可能となります。

変性すべり症・再発ヘルニア・不安定脊椎症には、脊髄造影、CT、MRIなどの画像検査を行い、必要性を十分検討した上で、金属内固定を併用した脊椎固定術を行っています。これらも可能な限り小切開で行い、神経除圧にあたって切除した椎弓の一部を移植骨として利用し、手術時間の短縮、出血量の軽減をはかっています。1~2椎間固定であればまず輸血する必要もありません。

頚椎症性脊髄症、頚椎椎間板ヘルニア、頚椎後縦靱帯骨化症などは、局所病態に応じて椎弓形成術、1~2椎間の限局した病変に対しては前方固定を行っています。選択的な椎弓形成を顕微鏡もしくは手術用ルーペを使用して手術を行うため、手術侵襲の軽減、手術時間の短縮、手術の安全性向上に繋がっています。

転移性脊椎腫瘍は、著しい疼痛・脊髄麻痺が生じます。月1回多職種連携リエゾンカンファレンスを行い、腫瘍専門の他科との連携をとりながら、的確な判断のもと、患者さんに最適の治療を行っています。

交通事故、労災事故などによる重度/多発外傷・外傷性脊椎脊髄損傷に対しては、高度救命救急センターの救急専門医と密接に連携し、緊急手術または早期の手術治療、脊柱再建術を行っています。これにより早期のリハビリテーションの開始、社会復帰が達成できると考えています。

骨粗鬆症について

超高齢社会の現在、骨粗鬆症の増加は医療・介護の面から大きな社会問題になっています。当科は日本骨粗鬆症学会認定医2名が在籍し、Quality of Life(生活の質)を高めるよう、常に患者さんの社会的背景や精神的側面に配慮しつつ日々の診療に当たっています。

当院では躯幹骨骨密度測定装置を導入し、寝たきりの原因となる背骨(脊椎)と股関節(大腿骨近位部)骨折の危険性を評価する骨密度測定(躯幹骨DXA)を行っています。

予防医学も重要であり、特に脆弱性骨折の予防として骨粗鬆症治療が必要です。現在は、放射線技師の協力のもと、椎体骨折と大腿骨近位部骨折のスクリーニングを行い、骨粗鬆症の未治療患者さんに対して治療導入を積極的に促しています。

また、正しい知識の普及は重要な課題です。定期的に、地域の高齢者を対象に骨粗鬆症の講演会を行っています。

倉敷骨を守る会

教授紹介

三谷 茂

SHIGERU MITANI

所属

川崎医科大学 骨・関節整形外科学教授、川崎医科大学附属病院 整形外科部長

専門分野

股関節外科、小児整形外科

認定医・専門医・指導医

医学博士、日本整形外科学会専門医、日本リハビリテーション医学会専門医、日本体育協会公認スポーツドクター

所属学会

日本整形外科学会、日本股関節学会、日本小児整形外科学会、日本CAOS研究会

略歴

1987年3月 岡山大学医学部医学科 卒業
1987年4月 岡山大学医学部附属病院整形外科 入局
1988年1月 岡山労災病院 研修医
1992年4月 旭川荘旭川療育園 医員
1993年4月 藤綱病院 医員
1993年9月 岡山大学大学院医学研究科 修了
1993年10月 岡山大学医学部附属病院 整形外科 医員
1994年4月 Royal National Orthopaedic Hospital, London, UK 留学
1995年5月 岡山大学医学部附属病院 整形外科 助手
2005年10月 岡山大学医学部・歯学部附属病院 整形外科 講師
2006年1月 岡山大学大学院医歯薬総合研究科 機能再生再建学(整形外科学) 講師
2006年8月 岡山大学大学院医歯薬総合研究科 機能再生再建学(整形外科学) 助教授
2010年4月 川崎医科大学 骨・関節整形外科 教授

教授紹介

難波 良文

YOSHIFUMI NAMBA

所属

川崎医科大学 骨・関節整形外科学教授、川崎医科大学附属病院 整形外科部長

専門分野

下肢の人工関節(特に股関節、膝関節の最小侵襲手術)

認定医・専門医・指導医

医学博士、日本整形外科学会専門医、日本リウマチ財団リウマチ登録医、日本体育協会公認スポーツドクター、日本リウマチ学会専門医、日本リハビリテーション医学会認定専門医

所属学会

日本整形外科学会、日本人工関節学会、日本股関節学会、日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)、日本リウマチ学会、日本関節病学会、日本リハビリテーション医学会、日本骨折治療学会、日本肘関節学会、中部日本整形外科・災害外科学会、中国・四国整形外科学会

略歴

1993年 岡山大学医学部 卒業
1996年 岡山済生会総合病院 医員
1997年 岡山大学医学部大学院 整形外科医学博士課程 修了
1997年 高知リハビリテーション病院 医員
1998年 岡山労災病院 医長
2005年 同上 副部長 兼 人工関節センター長
2006年 同上 部長 兼 人工関節センター長
2010年4月 川崎医科大学 骨・関節整形外科 講師
2010年 川崎医科大学 骨・関節整形外科 准教授
2015年 川崎医科大学 骨・関節整形外科 特任教授
2020年4月 川崎医科大学 骨・関節整形外科 教授