三原 雅史教授

立位歩行制御に関わる脳機能の解明

非侵襲的で測定中の被検者の動作への制約の少ない近赤外分光装置(functional Near-Infrared Spectroscopy: fNIRS)を用いて、歩行やバランス制御に関わる大脳皮質の働きについて検討を行い、健常者を対象とした検討で立位バランス制御における前頭前野および補足運動野などの役割について報告を行ってきました(Mihara M, et al. NeuroImage 2008, 43:329-36. Mihara M et al. NeuroReport 2012 23:314-9. Fujimoto H, Mihara M et al. Neuroimage 2014;85:547-554)。また、バランス課題と認知課題での二重課題条件においては、仮想現実(VR)を用いて視覚情報が姿勢制御に与える影響についても検討を行っています(Nishimoto R, Mihara M et al. Neuroimage. 2023;280:120352. )。

ニューロフィードバック技術を用いた新規治療システムの開発

fNIRS研究で培った信号処理技術を基に、fNIRS信号をリアルタイムで解析するアルゴリズムを開発し、特許出願をしています(6502488号:脳活動フィードバックシステム)。この技術を用い、運動イメージ中の脳活動を患者にフィードバックすることで脳内の機能的ネットワークを賦活するシステムを新たな治療装置(NIRSニューロリハシステム)として開発しています(Mihara M et al. PLoS ONE. 2012;7:e32234)。本システムは脳卒中後の上肢麻痺及び歩行・バランス障害に対して、リハビリテーションとの併用で機能回復を促進させることをあきらかにしています(Mihara M et al. Stroke. 2013;44:1091-8. Mihara M et al. Neurology. 96:e2587-98.)。

神経変性疾患における画像的バイオマーカーの検討

fNIRS以外にも、構造的・機能的MRIを用いたパーキンソン病や認知症における様々な機能障害の病態解明及び疾患バイオマーカーとなりうる画像的なパラメーターの検討を行っています。これまでに、パーキンソン病における易転倒性に右頭頂側頭連合野および上側頭回後半部の灰白質容量の低下と同部位を中心としたネットワーク機能の低下が関与していることや(Otomune H, Mihara M et al. Parkinsonism Related Disorders. 2019. 64:169-174)、パーキンソン病における相貌幻視に、前頭葉内側部と側頭葉内側の顔認識領域間の機能的ネットワークの低下が関与している可能性(Kajiyama Y, Mihara M et al. NPJ Parkinsons Dis. 2021;7:90.)を明らかにしています。また、認知症に関しても、軽度認知機能低下から初期認知症患者における周辺症状(BPSD)の発症と右中前頭回・右下前頭回三角部の灰白質容積低下が関連していることなどを明らかにしています(中村, 久徳, 三原 ら 川崎医学会誌 48:51-55.2022)。

認知症やパーキンソン病患者に対する遠隔リハビリテーションシステムの開発

スマートホンアプリを用いて医療者、患者双方にとって負担の少なく、効率的な自主訓練リハビリテーションを支援する遠隔リハビリテーションシステムの開発を川崎医療福祉大学と共同で研究開発しています。

逸見 祥司准教授  新しい神経伝導検査法の開発・実用化

糖尿病性多発ニューロパチーの新しい神経伝導検査法

糖尿病性多発ニューロパチーは軸索の長さに依存する神経障害なので、感覚神経で最長の足底神経(内側・外側)を測定することが、早期診断するための電気生理学的検査として妥当だと考えられます。腓腹神経を測定する場合においても、足関節より遠位の区間の神経伝導を評価することが推奨されます。この考えに基づいて、できるだけ遠位の区間の神経伝導を評価する、様々な神経伝導検査法を考案し、実用化してきました(Hemmi S, et al. Muscle Nerve 36: 307-312, 2007, Hemmi S, et al. Muscle Nerve. 53: 209-213, 2016, Hemmi S, et al. Clin Neurophysiol. 128: 1214-1219, 2017)。また、電気生理学の分野で有名なアラバマ大学バーミングハム校(Shin J. Oh教授)と共同研究し、その成果を研究論文に発表しています。

大澤 裕特任准教授

森 仁特任准教授  画像検査で異常が出ない神経疾患を高精度かつ迅速に診断する手法の開発

てんかんの症状検出を上げる工夫、片頭痛の正確な診断、不随意運動の検出

  • てんかんは、発作の動画記録がなければ、問診で診断する。脳波所見がなくても診断に至る疾患である。既存の症候学、側方徴候だけではいまだに不十分である。どのような問診が正確であるか、県内の成人てんかんの中心施設として、分析している。
  • 片頭痛の正確な診断は、適切な治療法の選択に必須である。正確な診断のもとでの、新規治療法のリアルワールドでの治療効果を検討して、発信する。
  • ボツリヌス治療の適応となる不随意運動の診断手法を開発する。不随意運動の解析は、ボツリヌス治療だけでなく、てんかん、片頭痛診療、神経免疫疾患、神経変性疾患の診断にも資する。

久德 弓子講師  当科外来受診患者の臨床情報登録システムの構築(長期間にわたる前向き観察研究)

ヒヤリ/ハットを見える化する<高齢者運転リスク評価のためのバイオマーカーの確立>

もの忘れ外来・運転免許外来患者などをはじめ当科外来を受診した患者様の臨床情報を登録しています。臨床情報(患者基本情報、診断名、総合的機能評価、神経心理評価、身体機能評価、MRIやSPECTなどの脳画像・近赤外分光装置などを用いた脳活動評価、運転シミュレーター検査など)を整理し、効率的に登録を行い、データを活用できるシステムを作成するためのデータ蓄積を行っています。また、既知の認知機能評価、軽微な違反や事故歴、脳波や画像データなどとの相関解析、判別解析を行うことにより、認知症の診断・進行度の客観的評価、高齢者運転リスク評価のためのバイオマーカーの確立を目指しています。

梶山 裕太講師

パーキンソン病の幻視形成に関わる脳機能ネットワークの解明

パーキンソン病の患者さんの中には、実際にないものが見えたり(幻視)、身近なものを見間違えたり(錯視)する方がいます。初期には軽い症状ですが、徐々に進行して妄想や認知障害に至ることもあり、早く症状に気づき、進行しやすい方を見極め、治療することが重要です。私たちは、特にパレイドリアという初期の錯視に関わる脳機能ネットワークの変化(Kajiyamaら, 2021; Gajananら, 2020/2021)を明らかにしてきました。そして、幻覚の発症や進行に伴う脳神経機構を明らかにしたいと考えています。

パーキンソン病患者の夜間寡動症状の検出と治療への応用

パーキンソン病患者さんは、不眠や日中の眠気などの睡眠障害や、夜間頻尿などを伴うことが多く、睡眠リズムや、夜間の運動症状は生活に大きく影響します。一方で、夜間の症状は医師が直接確認することはできませんし、ご家族・介護者も長い時間みることはできません。私たちは、ウェアラブル機器を用いて夜間の動きや、睡眠リズムを測定し、パーキンソン病患者全体の特徴や、一人一人の症状変化、そして1日全体を通しての治療効果を調べたいと考えています。

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  • 川崎医科大学
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  • 川崎医科大学総合医療センター
  • 川崎医科大学附属病院 認知症疾患医療センター

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