若手へのメッセージ
主任教授 畝 大
Dai Une
私が心臓血管外科医を選んだ理由は、(1)臓器として心臓に興味があった、(2)最新治療を欧米と国際学会等でdiscussion することに憧れていた、(3)手術による治療効果がすぐその場でわかることに魅力を感じた、(4)漫画やドラマの分かりやすいキャラクターに憧れていた、といった複数のものがあります。
医学生6年生の冬に入局を決めました。卒後すぐ海外学会に参加する教授の御供で米国入国審査時職業欄に「心臓血管外科医」とドキドキと嬉しく書いたことを覚えています。そのように憧れていた職業を選ぶ前に、あれこれと悩み躊躇した一番の理由は「術者になれないかもしれない」という不安でした。
修練時代は、自分のアンテナを建てて良い修練プログラムを追いかけて個人交渉し、真摯に技術を追いかけて研鑽し、術者ポジション獲得のために論文も書いてきたつもりです。山あり谷ありで良い指導医の先生達との出会いや運もあって術者となることができました。振り返ると楽しい修練時間を過ごせたと思っています。修練中は不安やストレスにおしつぶされそうに感じることもありました。もう1度同じ道を歩んで術者になれるかどうか分かりませんし、後輩に同様の不安定な思いをさせるのも避けたいと思っています。
幸い、私が大学卒業した2001年当時よりも成人心臓血管外科手術は安全性が確立されてトレーニングも改善されています。私自身も手先が器用ではありませんが年間100例以上の心臓手術を全国平均よりも高い安全度で行えるようになりました。簡単だとはいいませんが、きっちりと川崎医科大学でトレーニングを積めばみなさんは良い術者になれると信じています。
川崎医科大学心臓血管外科学では、心臓外科、大動脈外科、末梢血管外科、各々のカテーテル治療、と多様な治療の中で、どの分野でも術者への道が開かれているプログラムを目指しています。近い将来に川崎医科大学の柱となり、ゆくゆくは中四国の成人心臓血管外科を担う人材育成を目指したいと考えます。
医局は2024年1月より畝が教授に就任して新体制となりました。開心術や大動脈症例は順調に症例数の増加を認め、血管外科も従来通り質の高い専門治療を提供しています。若いチームでさらに症例数増加と成績安定を求めて変革中です。新しいチームにみなさまの若い力は不可欠ですので興味があればお声がけください。
資格は心臓血管外科専門医と医学博士を10年目までに取得できるようにプログラムを構築します。指導医への必須条件となる論文5本の執筆も同時期に完了となるようサポートをしていきます。また、希望時には国内留学や欧米留学も応援します。途中からの編入や各自の希望がある場合には個別相談に応じますのでこちらもお気軽に御相談ください。
一緒に楽しく頑張っていける若い力がチームに合流してくれることを期待します。
修練医の声
古澤 航平 先生
私は本学医学部を卒業後、本学附属病院で初期研修を行い、その後当科に入局しました。現在は医師8年目の心臓血管外科修練医として当科の心臓チームに所属し、外科専門医取得後の専門的な修練を積んでいます。また大学院にも所属し、大動脈疾患や経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)などの臨床研究にも取り組みながら、日々の診療と手術に携わっています。
医学生の頃から救急医療に興味があり、初期研修医の頃は救急医を志していました。しかし研修の中で心臓血管外科の手術や周術期管理に触れる機会があり、生命に直結する疾患に対して外科的に治療を行うこの分野に強い魅力を感じるようになりました。より専門性を持って患者さんの治療に関わりたいと考え、最終的に心臓血管外科の道を選択しました。
入局後は、当院関連病院である広島市民病院にて2年間研修を行い、外科医としての基礎的な修練を積ませていただきました。そこでは心臓血管外科だけでなく、消化器外科、呼吸器外科、乳腺外科など様々な外科診療科をローテーションし、幅広い外科診療を経験しました。当医局の勧めもありこの研修を行いましたが、非常に濃密な2年間であり、現在の自分の基礎的な外科知識や手技はこの期間に培われたものだと感じています。その後本学に戻り、現在は心臓血管外科修練医として日々診療と手術に取り組んでいます。
当科の1日は、朝7時15分から入院患者さんの診察を行い、7時30分からのカンファレンスでその日の治療方針や手術についてディスカッションするところから始まります。術前評価から術後管理までチームで議論することで、多くの学びを得ることができます。
修練医としては、手術の助手だけでなく執刀医としても手術を経験する機会をいただいています。私自身はこれまで年間約100例の手術に関わり、そのうち約30例を執刀医として担当させていただきました。主な内訳としては、大動脈弁置換術8例、冠動脈バイパス術10例、急性大動脈解離に対する手術8例(上行大動脈置換術4例、弓部大動脈置換術4例)、僧帽弁手術2例、大動脈基部置換術1例、その他の手術2例です。また近年は経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)にも執刀医として関わる機会をいただき、現在までに2例を経験しています。若手の段階から実際に執刀医として手術を経験できることは、当科で修練する大きな魅力の一つだと感じています。
私が初めて執刀医として担当した心臓血管外科手術は大動脈弁置換術でした。手術が決まってからは術前の情報収集や手術手順の確認を1週間以上かけて行い、時間があれば頭の中で何度も手術の流れをイメージしていました。当日は非常に緊張していましたが、上級医の先生方がすぐそばで丁寧に指導してくださり、チーム全体で手術を支えてくれていることを強く実感しました。気がつけば手術はあっという間に終わっていたように感じ、その経験は自分にとって大きな自信となりました。
実際に心臓血管外科の診療に携わる中で、生命に直結する疾患を扱う責任の重さを強く感じる場面も多く、時には大きな不安や緊張を感じることもあります。しかしその分、患者さんの命を救うことができたときの達成感は非常に大きく、この仕事のやりがいを日々実感しています。また、心臓血管外科の診療は生命に直結する疾患だけではなく、透析シャントの作成や下肢静脈瘤の治療など患者さんの生活の質に直結する分野も多く、様々な形で患者さんの生活を支えることができる点も魅力の一つです。
近年は働き方改革の影響もあり、朝は早いものの手術や業務が終了すれば比較的早く帰宅できる日もあります。私自身は二児の父でもありますが、家族と過ごす時間も大切にしながら日々の診療に取り組むことができています。
母校である本学で心臓血管外科の修練を行いながら、日々多くの経験と学びを得ています。心臓血管外科は決して簡単な分野ではありませんが、患者さんの命を救い、その人生に深く関わることができる非常にやりがいのある分野です。少しでも興味のある方は、ぜひ一度見学にいらしてください。実際の診療や手術の現場を見ていただくことで、この分野の魅力や当科での修練の雰囲気をより具体的に感じていただけると思います。