診療内容のご案内
1. 冠動脈バイパス手術
心臓表面を走る冠動脈が細くなったり詰まったりした場合に行う手術です。(狭心症や心筋梗塞に対するもの。)大切なことは多少時間をかけてでも長持ちするきれいなバイパスを作ることだと思い手術を行っています。方法も人工心肺を使用するもの、使用しないもの、小さな傷で行うもの、と3種類あり、各々の治療に充分な経験を持ち精通して最適なものを提案できると考えています。また、冠動脈バイパス術後の再冠動脈バイパス術の経験もありますので、他院では手術治療が難しいと言われた患者さんも御相談いただければと思います。
胸部の真ん中を切る場合に人工心肺を使用した冠動脈バイパス手術(心臓を止めて行うもの)と人工心肺を使用しないオフポンプ冠動脈バイパス術(心臓が動いたまま行うもので少し難易度が高くなるもの)の2つがあります。高齢者やリスクの高い患者様に対しては人工心肺を使用しないことで手術リスクが低くなるためオフポンプ冠動脈バイパス術が推奨されています。当院では心臓が動いたまま行うオフポンプ冠動脈バイパス術を標準的に行い、心停止した方が良いバイパスが作れると考えられる症例に対しては人工心肺を採用しています。術後の飲み薬や使用血管によりバイパスが長期間流れるかどうか決まる部分もあり注意深く使用血管や飲み薬を選んでいます(下記参照)。
複数のバイパスを置く冠動脈バイパス術において、2004年ごろよりカナダのオタワと米国のニューヨークで胸骨を切らない低侵襲冠動脈バイパス術(MICS-CABG: Minimally Invasive Coronary Artery Bypass Grafting)が開始されました。畝医師は低侵襲冠動脈バイパス術を考案したオタワ大学Dr. Marc Ruelのもとで2年半の研修を行っており当院でも手術を行うことができます(下記参照)
2. 心臓弁膜症の手術
心臓弁膜症は近年非常に患者さんが増加している分野です。心雑音だけ指摘されている無症状のものから歩行時や階段の上り下りで息切れがするものまで様々です。どの段階で手術に踏み切るかサジ加減が難しいですが、過去の膨大なデータ研究により線引きがされており症状が出る前の手術が勧められるようになってきました。「大動脈弁の至適手術時期について」は欧米学会誌に発表も行っており手術時期の決定は当院でも得意としています(下記参照)。外来でご本人/ご家族と一緒にガイドライン(医師達の治療方針取り決め)や過去のデータを見ながら説明させていただきます。手術がまだ必要無い早すぎる段階での手術治療は絶対にお勧めしないように心掛け一緒に病気とお付き合いさせていただきたいと思っています。他院で無症状にも関わらず手術を勧められて迷われている方もどうぞご相談ください。
弁膜症手術の主流は昔まで弁置換術でしたが、僧帽弁において自己弁を温存する弁形成術が今は主流で行われています。向き不向きはありますが可能な場合は形成術をできるだけ行う方針としております。大動脈弁に対しても、向いている患者さんに対して自己弁温存手術(大動脈弁形成術)を行うようにしています。形成術後はワーファリンによる抗凝固療法(血がサラサラになる薬)が不要となるため、これらの手術術式を選択することで術後の内服薬剤をずいぶん減らすことができます。
人工弁置換術では機械弁か生体弁(ウシやブタからできている弁)の2種類から使用する弁を選ぶ必要があります。機械弁はワーファリンを一生涯飲む必要がありますが耐久性が高く比較的若い患者様に向いています。一方、生体弁はワーファリンを中止できるものの10~15年程度で壊れることが多く比較的高齢の患者様に向いています。「生体弁がどのような患者さんにおいて耐久性が高いか(長持ちするか)」という研究結果を当院医師が欧米学会誌に発表しており、私たちが専門とする分野でもあります。弁選択も不安な場合には当院専門家にご相談ください(下記参照)。
最近では、比較的小さな傷で胸骨(胸の真ん中の板状の骨)をできるだけ切らない低侵襲手術(MICS: Minimally Invasive Cardiac Surgery)が一般的になってきており、当院においても内視鏡補助下に胸骨を全く切らないMICS を行っておりますので希望される方はご相談ください。
3. 胸部大動脈瘤
胸部大動脈瘤、胸部大動脈解離に対する手術も脳保護の進歩、人工血管の改良により安全に行われるようになってきました。救急体制が確立されて、緊急手術症例も増えてきています。ステントグラフト(血管内治療)が導入され、治療方法の選択肢も大きく広がっています。ステントグラフト手術は低侵襲であり、従来手術(人工血管置換術)は長期的な手術効果が期待できるという、それぞれの長所(逆は、それぞれの短所となりうる)を持っています。患者さんの状態は千差万別なので、十分な説明の上、一人ひとりに合った治療法を選択しています。
当院医師による心臓血管手術に関する論文
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Une D, Kulik A, Voisine P, Le May M, Ruel M. Correlates of saphenous vein graft hyperplasia and occlusion 1 year after coronary artery bypass grafting: analysis from the CASCADE randomized trial. Circulation. 2013;128(11 Suppl 1):S213-8. |
足の静脈を使用したバイパスが長持ちするための因子を解析。太い静脈、右冠動脈へのバイパスなどが危険因子であり、スタチン(コレステロール治療薬)やβブロッカー(心臓への薬)によりバイパスが長持ちすることを報告。治療後の内服薬処方の参考としています。 |
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Ruel M, Une D, Bonatti J, McGinn JT. Minimally invasive coronary artery bypass grafting: is it time for the robot? Curr Opin Cardiol. 2013 (6):639-45. |
MICS-CABG を考案したオタワ大学のRuel 教授とニューヨーク スタティンアイランド大学のMcginn教授、ロボットCABGの第一人者 Bonatti 教授とともにMICS-CABGとロボットCABGの成績や適応、手術に向いている患者さん、今後の方向性を話し合い発表。 |
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Une D, Mesana L, Chan V, et al. Clinical Impact of Changes in Left Ventricular Function After Aortic Valve Replacement: Analysis From 3112 Patients. Circulation. 2015;132(8):741-7 |
術前に心機能低下した患者さんに対する大動脈弁置換術の術後15年の成績を解析したもの。症状がひどくなる前や心拡大が起きる前に手術した方が予後がよいことを細かく報告。使用する人工弁は大きなものを入れた方が予後良好なことも報告。これらは手術を行う際の参考としています。 |
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Une D, Ruel M, David TE. Twenty-year durability of the aortic Hancock II bioprosthesis in young patients: is it durable enough? Eur J Cardiothorac Surg. 2014 (5):825-30. |
60歳以下の患者さん300名に生体弁大動脈弁置換術を行った後、20年間フォローした成績を解析。若い患者様、小さな人工弁を入れた場合に生体弁の耐久性が落ちることなどを報告。患者様と使用弁を相談する際に参考としています。 |
症例数・実績
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| 2024年1月~12月 | 2025年1月~12月 | |
|---|---|---|
| 心臓胸部大動脈手術(オフポンプ冠動脈バイパス術と人工心肺使用症例) | 105 | 107 |
| 弁膜症手術(複合手術含む) | 50 | 58 |
| 冠動脈手術(複合手術含む) | 40 | 38 |
| 胸部大動脈手術(複合手術含む) | 16 | 26 |
| その他(心内血栓など) | 6 | 3 |
| 上記のうちMICS(低侵襲アプローチ) | 11 | 6 |
| 胸腔鏡下左心耳閉鎖 | 0 | 4 |
| TAVI (経カテーテル的大動脈弁置換術) | 24 | 17 |
| ステントグラフト内挿術 | 96 | 97 |
| 胸部大動脈 | 42 | 37 |
| 腹部大動脈 | 54 | 60 |
| 腹部大動脈手術(開腹) | 9 | 11 |
| 末梢血管手術 | 327 | 351 |
| 静脈瘤 | 98 | 112 |
| 透析用動静脈シャント | 76 | 60 |
| 下腿動脈バイパス術 | 20 | 21 |
| 動脈疾患へのカテーテル治療 | 81 | 92 |
| その他 | 52 | 66 |