現代医学教育博物館について


名誉理事長 / 名誉館長
川 祐宣

 「百聞は一見に如かず」とか,「百読は一見に如かず」とかいう言葉は真実である。
 医学教育においては, 古くから見学・実習が重んじられてきた理由でもある。
 近来, 医学教育の講義も, 学会発表も, 学術講演も, 口述だけのものは少なくなりパネル・スライド・ビデオ・映画等を混じえて, 視聴覚に訴えるものが多くなってきた。
若い人達は, 幼少の頃からテレビ・漫画に馴染んで育ち, 学生達の常識は, テレビ・漫画の大きな影響を受けている。
 医学教育の本領は, 教師の立派な講義と, 学生の自発的読書にあることは, 昔も今も変わらないことであるが、万巻の医書を蔵することを誇りとしている医科大学の図書館は, 学生利用者が非常に少ない現状である。
 わたしは, これらの現実に鑑みて, 教育のための現代医学教育博物館の建設を決意したのである。
 建設に先立って, 多数の教育者を先進諸国に派遣し, 医学教育と教育資料館の見学・調査を行った。
 調査団を中心に, 医学教育博物館開設委員会を結成し準備をすすめ, 展示物のありかた, 方式を次のように決定した。

1. 実物標本  2. 模型標本  3. ビデオ  4. スライド  5. 映画  6. パネル 

 博物館の展示物は, 最新の医学のすべてを網羅して, 何れかの形・方法で展示することであるが, その中心となるべき実物標本を, 短期間に収集することは困難であるために, 取り敢えず, 自分で制作できるもの, 入手しやすいもので教育価値の高いものから, 順次取り揃え, 展示することとした。
 医学教育は最新の医学, 即ち現代医学の教育でなければならないとの考え方から, 近代や古代の医学は除外することにした。
 最新の医学は, 医学の進歩発達に副って, また医学教育の改善に伴って, 内容は修正されなければならない。
 博物館は, 医科大学の教育とパラメディカルの教育が中心となるが, 一般地域社会にも門戸を開くことにした。
 展示物の内容・範囲の基準は, 医学医療専門職として必要な知識と技術を取得するに充分な資料でなければならないが, 高度の専門的なものは除外することとした。
 これらの基準は, 現在, 川崎医科大学と医療短期大学の卒前卒後の教育基準と一致するものである。
一般社会人に対しては, 難解な医学を, わかりやすい表現で解説的に展示する, 所謂, 家庭医学・大衆医学の博物館でもある。
 私共は, 今後数年間, 全学をあげて, 博物館の内容充実に尽くしたい所存である。
 皆様のご指導とご支援をお願いして, 私の挨拶といたしたい。

(1981年5月)

 
 

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