第8回 FIM講習会in倉敷 / 質問と回答
FIM講習会質問

概論

質問

移動は、退院を想定して目標設定するが、予測は外れるので歩行と車いすを残し目標設するが、予測は外れるので歩行と車いすを残し目標設定を変更するが浴槽移乗も個浴とシャワー浴を残し目標設定してもいいのでしょうか。浴槽に入らない場合はどうしたらいいのでしょうか。

答え

FIMは原則「しているADL」の評価項目のため、通常は目標設定には用いられません。多職種カンファレンスなどで現在のFIMを指標に目標について話しあう場合、あくまで「目標」として記載する事は良いと思われます。
浴槽移乗は退院時の状態で分けることはしません。そのときの「しているADL」で評価します。
浴槽には入らず、シャワー浴のみの場合でも、シャワー椅子への移乗によって評価します。

質問

平均をつける項目(整容や更衣・トイレ動作など)は例えば、項目の中でも全介助ではなく軽介助のような場合はどうなりますか?介助量に関わらず介助とみなし、1点となりますか?

答え

基本的に、それぞれの項目の介助量(%)を平均して算出し点数をつけます。

質問

同月に入退院をした患者さんの場合のFIM入力の方法はどうしたらいいでしょうか。

答え

現実的に、48時間以内に入院/退院される患者さんはほとんどおられないと思われますが、原則に則り初回のFIMは48時間以内に採点します。また退院時のFIMも通常通りつけます。急変などで転科や転院が必要となった場合には当然点数は下がり、変化が無ければFIMも変化はなくて良いです。

質問

採点日に体調不良の訴えがあり、全介助で行ったため1点と採点しました(それまでは自分でできている方)。FIMの採点は採点日当日の状況をつけるのでしょうか?それとも直近何日間かのしているADLをつけるものなのでしょうか?

答え

FIMでは、特に採点日の指定はありません。最近のADLに基づき、かかわりの頻度や介助量の割合などを考慮して採点されます。体調が悪いことが特別な状況であれば、それを除いて日常しているADLで評価することが基本です。

質問

(排尿・排便管理としての質問) 排尿の際にPトイレを設置したので5点、排便時はトイレまで車いす介助で移動しています。便軟化剤などの内服はしていない方で、失敗もないため7点としました。評価方法としてはそれでよかったでしょうか?

答え

FIMでは、排泄に関わる項目としてはそれぞれ「トイレ移乗」「トイレ動作」「排泄」の3項目に分けて考えていきます。それぞれについて考えると、ポータブルトイレで自立できていれば「トイレ移乗」「トイレ動作」は7点(減点しない。ただし、手すりを使用すれば6点。)、「排泄」はポータブルトイレを設置してもらっていれば5点となります。

質問

%をとる場合と低い方をとる場合の違いは何ですか?項目によって違うのは分かりますが、その違いは何ですか?

答え

ある同一の内容について比較する場合は、原則として日内や日間の中から低い方の点数を採用します。ひとつの項目が並列の小項目に分割される場合は%をとります。

質問

転院時、前病院の退院時FIMと転院先の入院時FIMの点数は、環境も異なるため変化があるという理解でよいでしょうか?

答え

FIMは「しているADL」のため、実行環境に点数が左右されます。 転院先の病院への情報に参考としてFIMを記載する事は有用ですが、その際より詳しい情報を付記するとより良いでしょう。

質問

「○回に○回失敗する」などの場合の考え方に毎回とまどいます。特に認知項目で困ります。考えやすい方法等があれば教えていただきたいです。

答え

患者に関わる頻度や環境の条件などで、これらの評価には評価者間で差が生じ得ます。1日に話しかけたうち、何回言い直しを必要としたか、最初は計算してみるのも良いでしょう。 一人で評価するよりも、特に関わりの濃密なスタッフ間で情報を出し合い、最終的な頻度を決定する事ができます。

質問

入院期間中に外泊を実施した際、病棟と外泊時に相違がある時はどちらを採点すればいいですか。

答え

病棟でのFIMを評価します。

質問

本人は促せば4レベルの能力を持っているが、意欲が低いため結局ほぼ全介助しているため2点と採点しましたが、原則に則って低い点数でつけるとはこれでいいのでしょうか。

答え

しているADLで評価をするので、原則に則った採点で良いでしょう。

質問

リハビリテーションにおいて代償手段をとった場合、たとえ生活がうまく送れるようになったとしてもFIMの点数には反映されないのでしょうか?

答え

FIMは基本的には、代償手段を用いても介助量が減れば点数に反映されるようになっています。その項目が自立の場合は自助具使用などがあれば点数が満点とならないことになります。

移乗

質問

2点の動画で、着座に介助を要していなかったですが、この動画で着座にも介助を要す場合は1点になりますか。

答え

移乗のすべての段階に介助を要しており、1点となります。 患者の参加率が25%未満であれば1点となります。

質問

ベッド・車椅子・椅子は3つの合計の平均ですか?それぞれ33%ずつで考えるのですか?それとも3つのうちの一番低いものをつけるのですか?

答え

平均ではなく、最低点を採用します。 FIMの手引き(p.27)「車椅子の場合は~、歩行の場合は~」で車椅子使用と歩行で異なります。

質問

シャワーチェア使用時椅子を動かない様に押える配慮が必要、動作自体は自立(監視)の場合は、5点or4点か?シャワーチェア使用時の具体的な動作はありますか?

答え

椅子を押さえる介助をしているのでこの場合は4点となります。 第8回講習会資料巻末の具体例集(p.72)も参考にしてください。

質問

シャワー浴のみの患者さんで車椅子から入浴用の椅子に入れ替えるときに患者が手すりを使用し立位を行った場合、入浴時の移乗の評価は5点ですか、4点ですか?

答え

車椅子と入浴用の椅子を入れ替える介助を要しているので、この場合は4点です。

質問

安全性の配慮とは具体的にどのようなことをいいますか?見守りではないと思うのですが違いは?

答え

手すりやポータブルトイレ、シャワーチェアなどを設置する、安全な生活の動線を確保するなど介助者がいなくても良いように環境調整を行う事です。

階段

質問

75%以上や25%以上とありますが、患者さんがどこまで行えるかの判断基準がわからないので、教えてください。

答え

介助量で考えるとわかりやすいです。軽く触れる程度(最小介助)で昇降可能な場合は患者が75%以上の参加率で行えていると考えます。体を支え、次の段に足を進める介助を要していれば中等度以上の介助を要しており、患者は75%未満の参加率であると考えられます。 巻末の具体例集(p.74,75)も参考にしてください。

清拭

質問

滑りとめマットとお湯はりを準備し、他の動作は自立の場合は何点になるのでしょうか。

答え

マットの準備をしているので5点、他の動作は自立しているので7点となり、低い方を採用するので5点となります。 お湯はりは評価に含みません。

質問

定義に「浴槽、シャワー又はベッド上清拭のいずれでもよい」とありますが、シャワーは、シャワーチェアのことですか?

答え

シャワーとは、使用する道具のシャワーです。立位で使用する場合もあります。

質問

清拭をすべて自分で行える場合はどうなりますか?

答え

準備から全て自分で行えている場合であれば7点となります。

食事

質問

食事のときに、介助者が皿を移動させる介助を行いますが、それも介助量の中で採点してもよいですか?

答え

介助者が行っているので、介助量に含めて採点してください。食べる前に移動させれば、準備にあたり、5点となります。 食事中に移動すれば4点です。

質問

おしぼりの使用はどうなりますか?配るか自分で取りに行くかで違いはありますか?

答え

おしぼりは食事動作には含まれません。

質問

ペースが速くむせこむため動作を制止する必要があり5点。しかしリスク管理で結果的に介助しているがその場合は4点以下になりますか?

答え

食事動作に手をだす介助が必要であれば4点以下になります。口だけなら、助言で5点です。

更衣

質問

下半身の更衣で、靴下をはく習慣のない人の場合は減点になるものでしょうか。または項目に含まれないのでしょうか。

答え

普段から全く行わないならば「ズボン、下着、靴」の3項目に減らして採点すれば良いです。

質問

襟を直したり、ひもを結ぶタイプの衣類の着脱は採点項目に含まれないでしょうか。これらの動作に介助を要す場合は修正自立ですか、または4点以下になりますか。

答え

介助を要する場合は介助量により採点され4点以下となります。襟を直すだけの介助ならば軽介助の4点となります。紐を結ぶタイプの衣服は一般的な衣服とはみなされず、通常では採点の対象外になると考えますが、患者がそのような衣服を日常的に着る場合は介助量によって左右されます。

質問

上半身で、身体機能上の問題で前開き服の上ボタンを外してかぶり服のように着脱している場合、かぶり服で採点される4動作にプラスして、ボタンを留める動作が加わった5動作中、何動作できているかで採点するのでしょうか。

答え

普段からその動作をしていれば、その採点方法となります。

質問

着衣と脱衣の介助量が異なる場合は平均するとありますが、着衣と脱衣の点数の平均なのか、毎日の動作の平均なのでしょうか。

答え

着衣動作の全ての内容と脱衣動作の全ての内容の割合で評価します。

質問

夜間は病衣を着用し、日中は私服を着用する患者様がおられるのですが、この場合日中の私服への更衣時の採点をしてもよいのでしょうか。それとも低い方の病衣(社会的に受け入れられない衣服)を着用しているということの方を採点した方が良いのでしょうか?

答え

「社会的に受け入れられない衣服では採点できない」という決まりがあるため、病衣での採点はできません。そのため、この場合は私服での採点となります。

質問

終日、自宅から持参しているパジャマを着用している患者様は社会的に受け入れられる衣服には含まれないのでしょうか。また、外出せず、入院前も終日自宅でパジャマを着用して過ごされていた患者様の場合はどうしたらいいのでしょうか。

答え

パジャマは社会的に受け入れられる衣服には当てはまりません。そのため自宅でパジャマのみ着用されている場合は、定義上更衣を行っていないものとみなされることになり、採点としては1点となります。

質問

下衣を上げる動作は行えるが、上衣を下衣の中に入れるように依頼され、介助した場合は何点になりますか?

答え

介助があれば減点されます。介助の程度によりますが、この場合は軽介助(4点)と考えられます。

質問

日中は私服で夜間は病衣というのは1点ですか?

答え

病衣では評価できないため、日中の私服の着脱動作で評価すれば良いです。

トイレ動作

質問

流す動作が含まれないのはなぜですか?

答え

流す動作は主なトイレ動作ではないためです。

質問

排尿はベッド上端座位にて尿器使用し自立、排便はトイレにてシャワートイレを使用している場合、拭く動作が必要ない状況が生まれます(男性の場合)。その際に「ズボンを上げる、ズボンを下げる」のうち50%は自力でできているという採点でよいのでしょうか?

答え

おしりを拭く動作の評価は必要です。シャワートイレを自分で操作していればその部分は介助なしと評価してよいと思います。

排泄

質問

パット内へ排尿がおさまりますが、自身で替えることを依頼できません。この場合はおむつと同じと考えて1点と考えてよろしいでしょうか?

答え

自分でおむつ交換ができないため、1点の採点で良いでしょう。

質問

毎日排便がない患者さんの採点はどうなるのでしょうか(毎日排便しないが排便があった時に失敗する)

答え

排便のない場合は72時間を目安に排便のあった日の中での平均的な状況で考えてください。その時の失敗と介助量で評価・採点してください。

質問

排尿管理ではポータブルトイレの設置で5点となるが、トイレ動作では福祉用具使用による安全面への配慮であるため6点となる。トイレ動作と排尿管理がごちゃごちゃになりやすい。何かわかりやすいポイントはないですか。

答え

トイレ動作はズボンの上げ下ろしとおしりを拭く動作ができるかどうかで排尿排便は全体として評価します。排尿管理は出す(排泄する)ことと排尿の場の設定です。排尿の場の設定とは、適切なときに適切な場所で人の手を借りずに排泄しその「場」の始末(普通のトイレだといらない、尿器だと尿を捨てて片付ける)ができれば自立です。トイレ動作では、ポータブルトイレの使用は減点となりません。

質問

「失敗しないために頻回にオムツ交換が必要(本人が依頼)」は2点ですか?

答え

おむつを使用しているが、自分で漏れたことや交換依頼ができているので2点です。

質問

空振りは失敗になりますか?

答え

衣服やシーツを汚さず、取り替える交換の手間はないため、失敗にはなりません。

質問

排便管理の介助で、坐薬、浣腸、摘便、腹圧援助以外は考えなくて良いのですか? またどの程度介助したかはどのように考えるのですか?

答え

便を出すための介助は、座薬や浣腸の使用、摘便、腹圧援助などだと思います。あと、排泄の「場」の設定として、おむつを替えるなどがあります。 介助時は、どれくらいの割合で自己で行ったか、どれくらい介助者に手伝ってもらったかの割合で評価をしてください。

理解

質問

補聴器を自分で着用できない場合は何点になりますか。

答え

10%未満の介助・準備にあたり、5点と採点されます。

質問

失語があると判断しにくいです。危険行動はないが本人からの意思表示があまりないため、どこまで理解しているのか判断に困ります。何か指標のようなものはないでしょうか。

答え

聞き取った内容をどのように解釈・判断するかは理解の採点に含まれないので非常に難しいと思われます。「危険行動」というキーワードがありますので、複雑な内容ではなく基本的欲求についてであり、5点以下となると考えます。私たちが指示を丁寧な言い回しで言っているのか、単語レベルで指示を出しているのか、介助者の介助量や手間で採点してはいかがでしょうか。

質問

「もともと非音声手段(手話)を用いていた人のみが、非音声手段を用いてのコミュニケ-ションで採点される」とありますが、失語症や高次脳機能障害において、文字での理解であれば日常生活に大きな問題が出現しない場合、コミュニケーションの理解の点数はどのように採点されるのでしょうか?具体例をあげて教えてください。

答え

「文字で書いて理解させる」は手助けになります。手助けの頻度で点数を考えます。毎回であれば全介助の1点ですし、時々=10回に1回であれば5点です。

表出

質問

感覚失語で、同じ内容の質問を言葉を変えてもすべてYesと答えている場合は何点になりますか。

答え

理解・表出では内容をどのように解釈・判断するかは一切含みません。閉鎖的な質問に対してのYes-No反応は2点のキーワードですので、Yesが誤りであっても2点と判断されます。

質問

例えば「今日は何月?」という問いに対して全く見当違いな答え(「赤色」や「7時」など)を言った場合は何点になりますか。

答え

理解・表出では内容をどのように解釈・判断するかは一切含みません。この場合、7月が正解であっても「8月」「3月」という回答であった場合に表出の点数は下がりません。「赤色」「7時」という回答では、質問の理解ができていないと判断し理解の点数は下がります(4点以下)。 表出は他の場面を含めて採点する必要があると考えます。単語レベルでの表出ができていると判断し2点の可能性があります。

質問

何を尋ねても毎回同じことしか言わない場合は何点なのか。

答え

理解・表出では内容をどのように解釈・判断するかは一切含みません。表出している言葉が短文なのか単語なのか、などで採点すると良いと思われます(残語であれば表出は1点です)。

記憶

質問

「人からの依頼の実行」について。たとえばすべて依頼から実行での時間が比較的短時間のものですが、採点にふくまれる内容の時間的な目安、決まりはありますか?翌日の訓練時間などは含まれないものですか?

答え

評価者にストレスが掛かる程度の時間と定義されています。失語症の患者においては「3つのジェスチャーを続けて真似できる」かどうかを代わりの評価項目として利用可能とされていることから、即時~比較的早期の間に記憶(依頼内容)を保持できているかということを評価しています。一度の評価でのみ点数を決定するわけではないので、普段の状況から総合的に判断する必要があります。

質問

失語症の患者に対する記憶の項目で、依頼の実行として続けて3つのジェスチャーを真似できるか?というものがありますが、例えばどういうものですか?グーチョキパーのようなものでいいのでしょうか。

答え

簡単なジェスチャーでいいですが、例えばグーチョキパーなどのような、いわゆる相互に関連性のあるものよりも、それぞれ独立した動作が良いと思われます。

質問

病棟でリハビリ予定表を全症例に使用しており、本人に認知機能問題なく、時間変更なども対応可(記憶保持)の場合も物品使用で6点に減点されますか?

答え

本人が予定表を見ずに自立できていれば7点と評価してください。

質問

3つの項目はすべてクリアしているが毎日同じ内容の発言が多い場合は、記憶は減点されますか。

答え

3要素で問題がなければ7点と評価します。

質問

簡単な問題と複雑な問題の線引きはなんでしょうか?

答え

簡単な問題は日常の問題、複雑な問題は金銭管理・治療方針・薬の管理・対人トラブルなどです。詳細はテキストの具体例を参照してください。

社会的交流

質問

ある患者について質問です。失語や感情失禁の影響でコミュニケーションが難しい。しかし1とは言い難い。危険行動があり声掛けをしているため5点と採点していますが、1-5点の判断が難しいです。明確な基準がないものでしょうか?

答え

社会的交流は、どれだけ周囲に迷惑をかけているかで評価します。また、この項目では声掛けも介助になります。基本的には迷惑行動を避けるために必要な声掛けや配慮の頻度で評価します。 迷惑行動の(具体的)内容によっては、問題解決として評価される項目もあると考えます。このような場合、社会的交流・理解・問題解決はそれぞれ分けて考える必要があります。