HOME > 川崎医科大学皮膚科の魅力 - Report1

患者さんを全方向から捉える

ぱっとみると少女の絵が、じっとみていると、老婆の顔に見えてくるというだまし絵は、多くの人に見え方の多様性をおしえてくれます。同じものをみていても、見方や先入観によって、認識できるものは大いに変わってみえてしまうというこのような例は非常に多いものです。患者さんに内在している疾患と病態は、極めて多様で複雑なもので、医師の知識や先入観によって認識される「患者さん」「疾患」「病態」が、視点によって様々な見え方をするのは、自然なこととおもいます。しかしみているものは、同一なのだから、そこに本質的な真実があるはずなのです。ですから、診察にあたり、常に視点を変えて多角的に見ることが極めて大切なのだとおもいます。

日本の城の屋根に鳥がとまっていました。歩いていたヨーロッパの基礎学者達の誰かが、あれはなんだと、尋ね、鳥だろう?誰かが答えました。すると、別の人が「サイエンティストは、人と違うことを考えるべきだ。さて何にみえるかな、考えてみよう。」といったのです。それ以来、私は、普通の考え方以外に、幾通りも考えるようにしています。まさか、とおもうような突拍子もない考え方が、もしかしたら、正しいかもしれないからです。地動説のように。

ある治療が疾患に効くと信じて施行していても、もしかしたら、これが悪化要因かもしれない。

ある疾患がこの皮疹の原因と信じていても、もしかしたら、別の要因で生じているかもしれない。

同じ疾患を、異なる専門領域の医師がみたら、別の疾患名をつけるかも知れない。

患者さんを全方向から捉えようとすると、新しい視点から何か違ってみえることがあります。同じものをみているのに、違ってみえる。そのような瞬間を経験することは、誰にでもあるはずなのです。そのたびに理解が深まり臨床が面白いと思えます。「!」「!?」そんな知的興奮の波動を感じる時—それが学問を追求する楽しみとおもいます。

(青山 裕美)