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教授からのメッセージ

皮膚科のおもしろさ

皮膚科は、皮膚に生じるすべての疾患を診療対象にしているので、アレルギー、腫瘍、感染症、自己免疫性疾患など様々な疾患を診療します。そのため皮膚科診療では、基礎医学で学んだ知識が臨床を行う上で大変役に立ちます。

皮膚科医は、皮膚をみて絵合わせで診断していると思われることが多いのですが、そうではありません。私達皮膚科エキスパートは、皮膚をみて触ってその形態的な変化や質感的な微妙な変化を病理学的な変化に変換し、皮膚の表面下で生じている生体の反応を推察しています。さらに、皮膚の触診、全身の診察、問診、検査結果など、多種多様な情報を得て統合し、皮膚の表面下の変化を全身の変化と共に考察し、推理小説のようにその患者さんの皮膚疾患の病態を解明していきます。仮説をたて、治療を行うと、その正しさを皮疹の変化として自分の目で確認することができることがとてもおもしろく、飽きることがありません。

皮膚は内臓の鏡といわれますが、私はその言葉に少しばかり違和感を感じます。皮膚は単なる鏡ではなく、内臓と関連性を持ちつつ、独自性を持つ臓器です。目を見張るような巧妙な仕組みを持つバリア器官であり、免疫担当器官でもあります。私達の体の最外層の表面わずか0.02mmの角層の異常が皮膚炎を生じ、自分で気づくことができない程のわずかな発汗の低下が角層の乾燥を誘導し皮膚疾患を生じます。皮膚科を学び、皮膚科診療をしてみると、皮膚の美しさやその機能の巧妙さにあなたも目を見張ることでしょう。


ただ薬で症状を抑えるのではなく、治療をやめても健康な皮膚を維持するためには、疾患の原因や悪化要因を突き止め改善することが必要です。しかしながら、皮膚は多くの謎を秘めていて、なかなか真実を見せてくれません。私は皮膚を診るたびに、その謎を解き明かしたいと思うのです。

皮膚は誰でも簡単にみることができます。ただみることは簡単ですが、「皮疹が意味することを読み解くこと」は容易いことではないのです。時に、予想通りに軽快せず悩むこともあります。皮膚を生検し、その断面から病態を推察し、仮説を立て、検査を行い患者さんの声に耳を傾け、真剣に考え、学友と議論し、世界に知見を発信する過程で得られることは、真実を追究するものの喜びであり、私達皮膚科医に与えられた使命なのだとおもいます。


スタートラインから優秀な医師よりも、むしろ多少不器用でも、真面目にコツコツと努力する人のほうが、10年後には伸びると思っています。それが、学部生と全く違う、ロングランを走る社会人教育の面白さです。まず、研修医の皆さんには、自分で解決する力をつけて一人で生きていける皮膚科医になってほしいと願っています(子育てと同じです)。ですから、川崎医科大学皮膚科では、研修医のみなさんに、まず幅広い疾患に対応できる臨床力をつけてもらえるように研修プログラムをデザインしています。高い専門分野を持つ皮膚科スタッフと優しいシニアレジデントは、チームワーク良く、とても雰囲気の良い教室だとおもいます。

専門医を取得してからも、皮膚科が大好きで、生き生きと活躍する皮膚科医を目指して一緒に皮膚科学を学びましょう。