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研究内容紹介

“循環器内科医”をめざす皆さまへ

 多施設共同研究やレジストリーに積極的に参加し新たな治療戦略やエビデンス構築に携わり、国内のみならず世界に発信する研究の一端を担っています。

当科が参加している多施設共同研究およびレジストリー

  • National Clinical Database(日本臨床データベース機構,NCD)への症例登録
  • アジア弁膜症レジストリー
  • 冠動脈中等度狭窄病変を有する患者における侵襲的・非侵襲的画像診断法による心筋虚血診断に関する多施設共同観察研究
  • 経皮的冠動脈インターベンション施行患者を対象とした抗血小板療法による血栓性イベント、出血性イベント、血小板凝集抑制作用の実態調査:PENDULUM 研究
  • 冠動脈狭窄病変の機能的評価における拡張期FFRの診断に関する研究:DIASTOL study
  • 経皮的冠動脈形成術(PCI)でのステントガイダンスにおける光干渉断層法(OCT)と冠動脈造影法の比較研究 :COCOA 研究
  • 本邦における高用量スタチンを用いた心血管カテーテル検査および治療後の造影剤腎症予防効果に関する臨床研究:Prevent CINC-J study
  • 3D OCT(血管内光干渉断層法)システムを用いた冠動脈分岐部病変に対するPCI(冠動脈インターベンション)の前向き観察研究
  • 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(Chronic thromboembolic Pulmonary Hypertension: CTEPH)に対する Balloon pulmonary angioplasty (BPA) の有効性と安全性に関する多施設レジストリー研究
  • 出血リスクの高い経皮的冠動脈インターベンション施行患者を対象としたプラスグレル治療の研究-PENDULUM mono-
  • 実地臨床におけるエベロリムス溶出性ステント (XIENCE V™) とシロリムス溶出性ステント (CYPHER SELECTTM+ステント)の有効性および安全性についての多施設前向き無作為化オープンラベル比較試験:長期追跡試験

血管内イメージングを用いた冠動脈粥腫やステント内構造物に関する研究

 食生活の欧米化に伴い、狭心症や急性心筋梗塞といった虚血性心疾患の患者数は増加の一途を辿っています。

 私たちは血管内超音波(IVUS)や光干渉断層法(OCT)といった血管内イメージングを用いて虚血性心疾患の発症機序や、虚血性心疾患発症の素地となる冠動脈プラークの自然経過に関して研究しています。特に、糖尿病は古くから冠動脈粥腫の主要危険因子の一つであり、本邦においても冠動脈狭窄に対して冠動脈ステント留置術を施行される症例の45%は糖尿病を合併しているといわれています。糖尿病症例の冠動脈プラークの特徴や糖尿病薬のプラーク安定化作用やプラーク進展抑制作用を、血管内イメージングを用いて明らかにする研究を行っています。また、NIRS(近赤外線分光法)が臨床応用され、冠動脈プラーク内の脂質コアの検出が可能となりました。血管内イメージングとNIRSとを組み合わせ虚血性心疾患の病態を理解し、診断、治療に生かせるよう日々研究に取り組んでいます。

3Dエコーを用いた大動脈弁、僧帽弁複合体の研究

 近年、本邦で弁膜症は増加しており、それに伴う心不全が急増しています。弁膜症の中でも僧帽弁疾患と大動脈弁疾患は外科的治療が確立されており、術前の弁膜症診断は非常に重要です。僧帽弁と大動脈弁は複雑な立体構造を呈しており2Dでは構造把握が困難です。しかし、3Dエコー(経胸壁、経食道)を用いることでより本物に近い立体構築画像が得られ、それを外科医の視点で供覧する事が可能です。現在、我々はこの3Dエコーを用いて僧帽弁と大動脈弁だけでなく、僧帽弁と左室乳頭筋の位置関係、腱索との位置関係を術前術後で比較してよりよい手術方針を決定するための研究を外科医と協力し日々行っています。

心不全に関する研究

 心不全患者は年齢とともに増加しています。心不全を発症する原因はさまざまですが我々は心房細動による心不全に着目しております。心房細動といえば脳塞栓症の合併症が重要ですが心不全も同等に合併します。我々は心房細動例における心不全発症の予測危険因子を報告しており(Imai K et al. Internal Medicine 2014)さらなる研究を進めています。また、多くの心不全例では初期段階で利尿薬の投与が行われています。現在、利尿薬はループ利尿薬を代表に数多く存在しますが、使用に関しては医師の裁量に任せられているのが現状です。当科では心不全発症例に対して利尿薬の作用メカニズムの観点から心不全と利尿薬に関して研究を行っています。

心房細動に関する研究

 心房細動は循環器疾患の中(不整脈)でも多く遭遇します。高齢化社会の本邦では70歳代にピークがあり今後も増加を続け、2050年には総人口の1%になると予想されています。

 心房細動の最大の合併症は脳塞栓症であり、その予防には抗凝固薬が重要となります。以前から抗凝固療薬としてはワルファリンのみが使用されていましたが、近年は新規経口抗凝固薬(NOAC)が使用可能となり、抗凝固薬の選択が広がりました。心房細動の発症には動脈硬化による炎症も関与しており我々は心房細動と炎症に関して研究を行っています。